名物キャバレー会長が「50年の営業日誌」を初公開!(1)ホステスの奪い合いで乱闘 (1/2ページ)
歌舞伎町でキャバレー業界一筋60年。男はグランドキャバレーが消滅した現在も、昭和レトロキャバレーの伝道師としてホールの先頭に立っている。1日も欠かさず書き続けてきた営業日誌を見ながら、歌舞伎町でのキャバレー半世紀を激白した!
「おい! 駐車場に車が入ったぞ。行け!」
男の声が響く。若いボーイやウェイターが威勢のよい返事とともに駆け出していった。行く先は目の前の東宝会館(現・東宝ビル=ゴジラビル)地下駐車場だ。男も彼らとともに駆けつけた。
「お前ら、車の前に寝そべろ! 車を入れるな!」
男の声に応じたボーイたちが、駐車場に入ってきた車の前に身を横たえる。
「この野郎! 何やってんだ!」
車の中から罵声が飛んだ。
「何だ、やかましい! 降りてこい!」
転がったボーイたちも下から応戦する。すると直前で止まった車から相手連中が降りてきて、横になったボーイたちの横っ腹に蹴りが入った。
「野郎! やったな!」
双方殴り合いが始まる。その間に男が車のドアを開ける。車内には、男が店長を務める店のA子がいた。
「早く降りてこい」
店長は手を引っ張ってA子を車外に出すと、そのまま向かいのビルに連れ去った。
「待て!」
追いかけようとする車に乗っていた男に、間髪をいれずボーイが殴りかかった。別の場所でも殴り合いが続き、何人かが頭や額、口、鼻から血を流している。
目の前に広がるのは、人が行き交う歌舞伎町の街並みだ。誰が呼んだのか、目の前の歌舞伎町交番から警察官が走ってきた──。
この店長こそ、歌舞伎町でキャバレー一筋60年、「歌舞伎町のレジェンド」と言われている吉田康博氏(79)。回想シーンの若かりし当時の吉田氏は、東宝会館の向かいにある新宿ジョイパックビル7Fにあったクラブ「ムーラン・ドール」に勤めていた。フルバンドが入り300人ほどの女性が接客するキャバレーだ。
一方、吉田氏らに“襲われた”のは、1973年に東宝会館にオープンしたクラブ「ハイツ」である。