ザコにも魅力がある?『北斗の拳 -世紀末ザコ伝説-』舞台上演・記念インタビュー (5/5ページ)

──当たり前ですけど、北斗の拳で舞台をやることになった場合、ケンシロウでもラオウでも主役にできるわけじゃないですか。なぜそこでザコなのですか?
ザコP「それはやはり、自分がザコだからだと思います。僕だって子供の頃は『ケンシロウになりたい』と思ってました。けれど、ケンシロウは憧れの対象ではあっても、やっぱり自分はケンシロウにはなれないんです。ヒーローは1%のみ。残り99%は一般人です。一般人の僕は実際に世紀末が来たら、ザコか村人になるかしかない。じゃあ、一般人である自分の人生はダメなのか、って言われたらそんなことないですよね。胸を張ってザコとして生きていけばいい。そういう思いがあるんです」
──私はそこが一つのポイントだと思います。ケンシロウになれない、というのは分かります。でも、それなら『世紀末村人伝説』でも良かったわけですが、実際にフィーチャーされたのはザコの方だった。そこにこそザコの魅力が隠されている気がするんです。なぜ、村人ではなくザコだったんですか?
ザコP「正確に言うと、僕の中には村人というカテゴリーはないんですよ」
──村人がない? どういうことですか?? 人類皆ザコということですか??
ザコP「ザコと村人の間に明確な線引はないというか、あんな時代ですから、何か一つ間違えば村人だってザコになると思うんです。ザコだって昔はサラリーマンだったかもしれません。だから、原作では明確な悪役であり、やられ役でしたけど、彼らだって村人と同じで生きている人間なんです。真面目なザコから小狡いザコまで色んなザコがいるはずです。ザコは社会の縮図なんです。彼らの実際の生活を描けば、何が『正義』なのかはもっと曖昧になると思います。ザコに魅力があるというよりも、ザコだってそれぞれの立場で一生懸命生きている、という感じですかね、今回のテーマは」

──なるほど。しかし、例えば、『北斗の宴』などはザコなりきりアプリですよね。我々にはザコへの憧れというか、「ザコになってみたい気持ち」があると思うんです。でも、世紀末で村人になってみたい、とは思わないですよね? やっぱりザコには特別な魅力がある気がしてなりません。ザコPは弱民から種籾を奪ってスカッとしたくないですか? 私はしたいです。
ザコP「い、いや……そういう気持ちはあんまり……」
──エッ? 本当ですか!? 人間ハンマー投げとかで村人を無意味に殺傷したりしたくないんですか? 私はしたいです!
ザコP「実際にやるかと言われればやりませんけど……。確かにYoutuberとかの破天荒な行いに対して、心の奥底で共感するものはあるのかもしれません。自分はそこまでできないけど、破天荒さに憧れる……というか……」
──ほら! やっぱり、ザコになって残虐非道行為がしたいんじゃないですかー! イイ子ちゃんぶりやがってよぉお~~!
ザコP「い、いや、でも! 今回の舞台はザコの残虐非道行為を再現したいわけじゃないんです! 自分はそんなことやらないけど、ザコのそういう行為を否定できるのか、というテーマなんです!」
──なんだと~~?
ザコP「だから今回の舞台は子供にも見て欲しいんです。ヒーローになれないザコであっても生きてるんだ、ザコでいいんだ、窮屈な世界だけどもっと自由に生きて良いんだ、そういう気持ちになって欲しいんです!」
──今回は貴重なお話をありがとうございました、ヒャッハー!
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ザコにはザコの人生があり、物語がある。原作において物語性、人間性を排除されてきたザコたちだからこそ、そこに想像の余地が残され、彼らの人生を想像することができる。そして、想像してしまえば、彼らに物語が生まれ、より身近な存在として、われわれはザコへと感情移入することができるのです。
彼らの底抜けの明るさとエネルギーが、物語性を付与されることによってどう変化するのか。等身大の人間となったザコたちは今まで通りに元気にヒャッハーできるのか。9月6日からの舞台を楽しみに待ちたいと思います。
舞台『北斗の拳 -世紀末ザコ伝説-』
【公演日程】
2017年9月6日(水)~10日(日)
【会場】
シアターGロッソ(〒112-0004 東京都文京区後楽1丁目3−61)
【原作】『北斗の拳』原作:武論尊 漫画:原哲夫
【脚本】川尻恵太(SUGARBOY)
【演出】村井雄(KPR/開幕ペナントレース)
【音楽】TSUTCHIE
【OPENING LIVE】「愛をとりもどせ!!」クリスタルキング with A応P
【声の出演】千葉繁
【出演】
磯貝龍虎、河合龍之介、寿里、花園直道、林野健志、水希蒼(A応P)/
青山フォール勝ち(ネルソンズ)、キャベツ確認中(キャプテン★ザコ、しまぞうZ)、
街裏ぴんく/大岩主弥、福島悠介、吉野哲平/
円盤ライダー(渡部将之、冠仁、賢茂エイジ、森田和正)、
KPR/開幕ペナントレース(高崎拓郎、G.K.Masayuki、森田祐吏)
ジャギ(トリプルキャスト):角田信朗(6日・7日夜・9日昼)、
武田幸三(8日・10日昼)、山本圭壱(7日昼・9日夜・10日夜)
【出演ゲスト】
谷口賢志さん(9/6 19:00)、川本成さん(9/7 14:00)、河原田巧也(9/7 19:00)水石亜飛夢さん(9/8 19:00)
中河内雅貴さん(9/9 13:00)、中村優一さん(9/9 18:00)、藤田玲さん(9/10 13:00/17:00)
【アフタートーク】
・9/6夜 初日公演 磯貝龍虎、河合龍之介、水希蒼、千葉繁
・9/7 昼公演 A応P
・9/7 夜公演 武論尊・原哲夫
・9/8 夜公演 寿里、林野健志、花園直道
©武論尊・原哲夫/NSP 1983, ©北斗の拳-世紀末ザコ伝説-製作委員会2017 版権許諾証GP-907
著者プロフィール

作家
架神恭介
広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『ダンゲロス1969』(Kindle)