森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 全党が間違っている (1/2ページ)
今回の衆議院選挙では、2019年10月からの消費税率引き上げが大きな争点となった。しかし、私は完全に論点がずれていると感じていた。
消費税率を引き上げたら経済が失速するというのは、'14年度の経験から明らかだが、引き上げを凍結したからといって、国民が景気回復実感を得ることはない。実質賃金が下がっているからだ。
その最大の原因は、もちろん消費税率を8%に引き上げたことにある。だから、デフレ脱却への処方箋は、とてもシンプルだ。消費税率を8%から5%に戻すことだ。そうすれば、間違いなく景気は力強い拡大軌道に乗り、国民も景気回復を感じるはずなのだ。
ところが、野党を含めてどの党も、消費税率の引き下げという政策を掲げなかった。それは、「日本の財政は1000兆円以上もの借金を抱えて、先進国の中で最悪の破たん状況にある」という、財務省が行ってきたキャンペーンの言葉を鵜呑みにしているからだろう。
いまから16年ほど前、日本経済の最大の懸案は、不良債権処理だった。当時、私は、「不良債権というのは、担保不動産の過度の値下がりに伴って、融資に担保不足が生じているだけなので、日銀がインフレターゲットを伴う金融緩和をして、不動産の異常な値下がりを解消してやれば、何の問題もなくなる」と主張していた。その主張に対して、金融庁顧問を務め、竹中平蔵大臣とともに、「金融再生プログラム」による不良債権処理を断行した木村剛氏は、次のような主張をした。
「インフレターゲットを定めて無理な量的金融緩和を行うと、ハイパーインフレになってしまう。パイプの中に不良債権というゴミが詰まっていることが日本経済の効率的な資源配分を妨げているのだから、このゴミを取り除かない限り、日本経済の再生はない。不良債権の問題は、流通、建設、不動産という特定業種で膨大な過剰債務を抱える大手30社の問題だ。そこで、塩漬けになっている資金が成長産業に回って行かないことが、日本の成長を阻害しているのだ」
こうした木村氏の主張に、政府も主流派の学者、メディアまでが一斉に乗っかった。そして、デフレが継続する中で不良債権処理が強行された。その結果、ダイエーに代表される大手30社は、二束三文でハゲタカたちに食われたのだ。