なぜ語彙力があると「デキる」と思われやすいの?――【言葉の専門家×若者】社会で活躍するための“語彙力”基礎講座<前> (7/8ページ)

新刊JP

ただ、言葉って生き物で常に変化するし、新しいものが定着することもあります。「ヤバい」って多分ずっと残ると思うんですけど、その残る言葉と残らない言葉の境目ってなんだと思いますか?

山口:難しいところですね。1980年代の終わり、国鉄の民営化に合わせて電車のことを「E電」と呼ぼうっていうキャンペーンが打たれたんです。

秋吉:ダサい名前っすね…。

山口:でも全然ダメでした。定着しませんでした。どれだけお金をかけても定着しないものはしませんし、お金をかけなくても定着するものはするんです。

テオ:じゃあ、「ヤバい」はどういう風に定着したんですか?

山口:実は「ヤバい」という言葉は、さきほど秋吉君が言ったように良い意味ではないものでした。江戸時代は隠語して使われていて、「危ない」という意味なんですね。

――泥棒が使う言葉だったそうですね。

山口:そうです。だから人前で使うことはできないような言葉でした。

テオ:それがどうしてこんなに広がったんですか?

山口:主に大阪で使われていた言葉だったのですが、ある有名な作家がこの言葉を小説に使ってからぶわーっと広がっていきます。その作家の名は川端康成です。彼は『浅草紅団』という小説の中で「ヤバイ」を使ったんです。

――「川端の日本語は美しい」ってよく言いますけど、私たちが使う日本語をガラっと変えてしまった人なんですね。

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