死にゆくオフィーリアから白ユリの美少女まで、ロンドンの「テート・ブリテン」で絶世の美女に会う旅 (4/9ページ)
・「受胎告知(The Annunciation)」
1892年、展示室1890
フランスで美術を学んだイギリスの芸術家世代であるアーサー・ハッカー(Arthur Hacker)が、聖母マリアが大天使からキリストの妊娠を告げられる場面を描いた大作です。
「受胎告知」の場面は宗教画として様々な画家たちに描かれていますが、この作品は宗教画然とした多くの作品とは印象が異なります。
井戸で水汲みをするマリアの背後からまるで霊魂のように忍び寄る大天使ガブリエルと受胎告知を受けたマリア。マリアの静かながら深い驚きを表現しているのか、彼女は直立し、胸に両手を当てながら真顔で一点を見つめています。マリアの目線は絵の鑑賞者を直視しているようでもあり、宙を見つめているようでもありますが、この大きな絵の中でわずかな大きさでしかないながらも、その強烈な目力に釘付けになってしまいます。
・ラファエル前派の最も有名な作品「オフィーリア(Ophelia)」
1851-2年、展示室1840
ジョン・エヴァレット・ミレイ(Sir John Everett Millais)、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti)、ウィリアム・ホルマン・ハント(William Holman Hunt)の3人の画家によって1848年にロンドンで結成されたラファエル前派(『ラファエル』は『ラファエロ』の英語読み)は、イタリアの画家ラファエロを芸術の最高峰と仰ぎ、旧態依然としていた当時のイギリス美術界に反旗を翻し、ラファエロが登場する以前の色彩豊かで生命力に溢れた芸術を取り戻すことを理想に掲げました。