「扇と仏教との関係」ーー扇は仏教によってどのように発展してきたか (3/4ページ)
1164(長寛2)年、平清盛が一門の繁栄を祈念し、一族とともに厳島神社に奉納した『平家納経』のような「装飾経」の頂点を極めたものとは趣は異なるが、『扇面法華経冊子』は1152(仁平2)年頃製作され、鳥羽法皇の皇后・高陽院(かやのいん)が願主として大阪・四天王寺に奉納したという説が有力だ。製作意図は今となっては不明であるが、贅を凝らした扇面写経であることから、法華経に託された仏への強い帰依を物語るものだと言える。
■法華経の流布に一役買った扇
平安時代当時と必ずしも同じとは言えないが、法華経信仰そのものは、現在もなお、多くの人々に広く保たれている。その理由として、美術史家の宮次男は、法華経は「明快に、悪人成仏・女人(にょにん)成仏を説き、またさまざまな譬話や聖者の伝記などを利用して、わかりやすく親しまれる内容を持っている」こと。そして経の中に「瞑想中の釈迦仏の眉間から光が放たれて、東方の一万八千の仏国土を照らし、それぞれの仏国土の最下層の地獄から最上層の天界までの森羅万象を出現させる」、「釈迦仏が法華経を説くと、それを聴くために多宝(たほう)如来の坐す大宝塔が地上から湧出して空中に昇り、地上高く静止すると、釈迦仏の仏国土はその瞬間に理想の楽園に変わり、また全世界に散在していた無数の釈迦の分身仏が飛来して集合する」などの「気宇広大」な世界が描かれていることを挙げている。
■最期に…
2018年、公益財団法人日本漢字能力検定協会による「今年の世相を表す漢字」は「災」だった。その理由は「北海道・大阪・島根での地震、西日本豪雨、大型台風到来、記録的猛暑など、日本各地で起きた大規模な自然『災』害により、多くの人が被『災』した。自助共助による防『災』・減『災』意識も高まり、スーパーボランティアの活躍にも注目が集まった。新元号となる来年に向けて、多くの人々が『災』害を忘れないと心に刻んだ年」ということだった。
2019年の漢字は、『扇面法華経冊子』の奉納者が求めた「救」、そしてその思いや行動を表す「祈」など、希望のある言葉が選ばれればいいのだが。