森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★EU離脱は性格の不一致 (1/2ページ)
2016年の国民投票で決まったイギリスのEU離脱が、いまだ決着しない。ただ、ジョンソン首相とEUの間で合意された最終案がイギリス議会で承認されれば、離脱に向けての手続きが動き出す。5兆円近い「手切れ金」を支払ってまで、なぜイギリスがEUから離脱をする必要があるのか。私は、大陸と島国の間の「性格の不一致」だとみている。
例えば、日本人は海外で中国人とよく間違われる。確かに見た目はよく似ているが、日本人からしたら、面白くはない。日本と中国は、まったく違うからだ。
同じ事情がイギリスと大陸ヨーロッパの間にも存在する。例えば、イギリスは車が左側を走っており、大陸の右側とは逆。大陸は、料理に情熱を傾けるが、イギリスは無頓着だ。大陸は通貨がユーロだが、イギリスはポンド。英語は世界58カ国で公用語となっているが、大陸で英語を公用語にしている国は一つもない。
だから、そもそもイギリスが大陸と一緒になること自体に無理があったのだ。今回のEU離脱は、その無理を解消するステップだ。
それでは、なぜ“離婚”がすんなり行かなかったのかといえば、アイルランドの問題があるからだ。イギリスはグレートブリテン島と北アイルランドの連合王国である。もともとアイルランド全体がイギリスの統治下にあったが、独立戦争を経て1922年にアイルランド自由国が建国された。だが、独立の際、北部6州はイギリスに留まった。もともと北部はカトリックの強い地域で、プロテスタントの強い南部との対立があったと言われている。
その後、北アイルランドでもプロテスタントが主流派となるなかで、アイルランドとの統一を求める声が強まり、その世論に乗った過激派がイギリス国内でテロを繰り返すようになった。しかし、’98年にベルファスト合意で和平が実現し、アイルランドは北アイルランドの領有権を放棄。その後も小規模なテロは続いたが、現在では過激派の完全な武装解除が確認されている。
とはいえアイルランドの平和は、アイルランドと北アイルランドとの間で、ともにEU加盟国としての自由な往来が保証されてきたことによって達成された側面も大きい。