着物の文様から絵師・鈴木春信の浮世絵「風俗四季哥仙」を読み解く!春信の魅力 その3【後編】 (4/7ページ)
能の『高砂』を手短にご紹介すると、肥後(熊本県)阿蘇神社の神主が都へ行く途中に、有名な御神木である高砂の松を見ようと播州の高砂の浦に立ち寄りました。その松の木を探していると、清浄な佇まいの夫婦とおぼしき翁と媼が、手に熊手と箒をもって松の下を掃き清めていました。
神主はその老夫婦に前述の問いを訪ねます。すると翁は「高砂と住吉で遠く離れていたとしても、夫婦のようなもので、心が通じ合っていれば分かり合えるものなのですよ」と語り、媼は「たとえば和歌が万葉の昔から絶えないのは、草木のような万物に心が宿るからで、その草木の中でも松は一千年も緑を絶やさず、大変おめでたいものなのです」と語りました。
神主が「あなた方はどちらの方ですか?」と訪ねたところ、「私達は高砂と住吉の相生の松の精です。住吉の浦で待っていますよ」と言って小舟に乗り、海の沖へと行ってしまった。神主は急いで船を出し、二人を追うと・・・(後略)
というお話なのです。
つまり、この絵の男女は、能の『高砂』に出てくる、夫婦和合・長寿の象徴である翁と媼を若い男女に描いたのではないでしょうか。そうすると女性の着物に住吉模様の“白砂青松”が描かれているのに合点がいきます。
“源氏香”文様さて、男性を見てみると羽織の袖のあたりに、これみよがしに描かれている紋があります。この紋は“源氏香”という図案に大変よく似ていますが、52種類の“源氏香”の中に、この図案は存在しません。