着物の柄から絵師・鈴木春信の代表作「風俗四季哥仙」を読み解く!春信の魅力 その4【後編】 (2/5ページ)
流れの下流には二人の女性がいます。立っている女性が着ている着物の模様はアヤメでしょうか?それともショウブか杜若?
皆さんも「いずれアヤメかカキツバタ」というフレーズを耳にしたことがあるかもしれません。これはこの花の見分けがつきにくいということから転じて、“どちらも優劣がつけ難い”という意味です。
着物の柄に「杜若(かきつばた)文様」または「八橋文様にかきつばた」という絵柄があります。これらは全て「伊勢物語」を踏まえて描かれた文様です。
「伊勢物語」は平安時代、奔放な人生を送ったとされる天才歌人・在原業平をモデルに、主に恋愛を含めたさまざまな内容が、和歌を中心に語られた歌物語です。
その中のある場面で、身分違いの恋に破れた男が都を下って流浪する最中、三河の八橋の沢を通ります。すると杜若(かきつばた)の花があちらこちらに美しく花を咲き誇らせていました。
男はその美しい光景を目にして郷愁の念にかられ歌を詠みます。