「いかに美しく負けさせるかに心を砕いた」 全てを詰め込んだ競馬エンタメ巨編を早見和真が語る (1/5ページ)

新刊JP

『ザ・ロイヤルファミリー』を執筆した早見和真さん
『ザ・ロイヤルファミリー』を執筆した早見和真さん

父から子へ。競馬の世界を舞台に、血と夢の継承をテーマにした小説が『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮社刊)だ。

税理士の栗須(クリス)は、ビギナーズラックで当てた馬券のせいで、ワンマン社長として有名な馬主・山王の秘書になる。「ロイヤルホープ」と「ロイヤルファミリー」という2頭の馬を中心に立ち向かう者たちを描いた意欲作で、最後のシーンは誰もが手に汗を握ってしまうと同時に、最後のページで本当の希望を見ることになるだろう。

今回は作者の早見和真さんにその物語の成り立ちや伝えたかったことについてお話をうかがった。

(取材・構成・写真:金井元貴)

■モチーフはカズオ・イシグロの『日の名残り』 ――『ザ・ロイヤルファミリー』は競馬の世界を描いた小説ですが、まず気になったのが、描かれているそのほとんどが敗北のシーンだということです。レースで勝つシーンはほとんど描かれていません。

早見:そうですね。競馬はそのレースで1頭しか勝者がいないスポーツです。人間も同じで勝つよりも負けることの方が多いと思うんですよね。今回の小説では、いかに美しく負けさせるかという点に心を砕きました。

人間でも格好悪い負け方をする人っているじゃないですか。言い訳をしたりするような。ああいう人が嫌いで、全力を振り絞って負けて、言い訳はしない。そういう格好いい負け方を描きたいということはずっと頭の中にありました。

――もともと私は競馬に全くと言っていいほど興味がなくて、一度友人に誘われて競馬場でレースを観たことがある程度でした。この小説は栗須(クリス)という馬主のマネージャー視点で物語が進んでいきますが、この視点は本当に助かりました。

早見:その感想は嬉しいです。この物語で書きたかったことは「血の継承」とともに、「思いや夢の継承」でした。ただ、この小説は二部構成になっていますが、「継承」を書くにあたって一部から二部にどう移るかという点が一番の肝であり、チャレンジだったんですね。

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