「控訴はしない。カッコ悪いから」確定死刑囚・植松聖が遺した最期の言葉

Asagei Biz

植松死刑囚
植松死刑囚

 国際社会病理学者で桐蔭横浜大学法学部教授の阿部憲仁氏は「大量殺人・連続殺人の専門家」として凶悪犯罪者を取材・研究してきた。2016年に相模原殺傷事件を起こし、今年3月31日に確定死刑囚となった植松聖もその一人で、面会や手紙でやり取りを続けてきた。

 また、阿部教授は「女優シャロン・テート殺害事件」で知られるチャールズ・マンソン(故人)、若いカップルを中心に13名を銃撃し、6名を射殺するという「サムの息子事件」を起こしたデビッド・バーコウィッツら全米を震撼させた犯罪者たちとも交流を続けてきた。

「私が面会した中の一人に、70年代にカリフォルニアで13人を殺害したハーバート・マリンという連続殺人犯がいます。彼は幼少期から両親のコントロール下で『理想の子供』を演じ続けていました。そして植松元被告と同様、思春期にドラッグを使用し、『大地震を防ぐために人を殺せ』という天の声が聞こえ、それまで押さえていた怒りが連続殺人という形で一気に爆発した、と話していました」

 植松被告もまた、犯行時には精神的にかなり追い詰められた状況だったと見ている。

「自分は無能で、生きる価値がない。そう思っていた植松被告が、どうにかして父親や社会に自分を認めさせたい。ではどうすればいいのか。薬物の力を使ってたどりついた彼なりの歪んだ結論が、あの凶行だったのではないか。彼は滝登りと登り龍の絵を描いていますが、これは彼なりの上昇志向によって、昔のみじめだった状況から飛び出した心境を表していると言っていいでしょう」

 実は死刑判決が下された3月16日の直前、阿部教授は植松元被告と面会を果たしている。

「面会室で会った植松元被告は『控訴はしない。カッコ悪いから』と語っていました。おそらく、植松被告は自分自身を殉教者、死刑を高潔な死と捉えているのではないでしょうか。一連の絵の中で最後に描かれた大日如来像図は、彼なりに覚悟ができていることの表れであると推察します」

 凄惨な事件から4年、遺族らが望んでいた謝罪の弁は、ついに彼の口から語られることはなかった。

阿部憲仁(あべ・けんじ)
予備校の超人気講師を経て渡米。北カリフォルニア大学等に勤務するかたわら、チャールズ・マンソン、のちに映画化もされた「サムの息子」ことデビッド・バーコウィッツ、90名以上の殺害を自供したサミュエル・リトルら、名だたる凶悪犯とやり取りを続けてきた。著書に「無差別殺人犯の正体」(学文社)がある

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