長嶋茂雄「六大学新記録と南海を逆転した巨人スカウト陣の秘策」 (3/5ページ)

日刊大衆

永田夫人は、「成田山(新勝寺)にお参りに来ました。そのついでと言っては失礼ですが」と、突然の訪問を詫び、永田の思いを伝言したという。“永田ラッパ”と呼ばれていた永田は、その横紙破りな行動力で有名だった。千葉の片田舎にあった長嶋家を電撃訪問したのも、いかにも永田らしい作戦だったと言える。

■副キャプテンを務めた長嶋

 最上級生になった長嶋は、副キャプテンを務めた。キャプテンには、しっかり者だった本屋敷錦吾(のちに阪急に入団)が、満場一致で選ばれていた。六大学のタイ記録に並ぶ通算7号ホームランは、4月14日の法立(法大VS立大)2回戦だった。3回一死一塁、左腕の水津正のカーブが高めに入ってきたところを振り抜き、バックスクリーン左横の中段に突き刺さる大ホームランを放った。立大は長嶋の活躍もあって、勝ち点5で完全優勝を果たしている。

 学生生活最後となる秋のリーグ戦では、新記録となる8号ホームランの期待が高まった。ところが長嶋は、3カードを終えた時点で21打数3安打、打率1割4分3厘と、大学入学以来、最大のスランプに陥っていた。「あのカメラ、止めてもらえませんか……」 長嶋は親しい運動部の記者に、こう懇願している。

 実は、『報知新聞』(現『スポーツ報知』)では、長嶋の記念すべき第8号ホームランの瞬間をキャッチするため、秋のリーグ戦が始まってから長嶋の全打席を追っていた。一塁側のカメラ席から、特注のアイモ改造カメラ(1秒間に120コマ撮影できた)で狙っていたのだ。当時の六大学リーグ戦は、プロ野球の試合以上に人気があり、特に立大の試合は神宮球場が満員になり、盛大な応援がチームを盛り上げていた。球場には絶えず大歓声が響いていたのだが、長嶋はアイモの作動する「ジー」という音が気になって仕方なかったようだ。

 しかし、そこは天性のスーパースター・長嶋である。4カード目の明立(明大VS立大)1回戦、長嶋は明大の3投手から5打数5安打と打ちまくり、一気に打率を3割に乗せると、最終カードの慶立(慶大VS立大)2回戦まで3割台をキープ。この試合に勝てば立大が優勝、春秋連覇となる。5回表、長嶋に打席が回ってきた。〈狙い球を絞ったわけではありません。

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