スポ根テニス漫画「エースをねらえ!」に見る仏教思想と永遠の命 (1/3ページ)

心に残る家族葬

スポ根テニス漫画「エースをねらえ!」に見る仏教思想と永遠の命

生きることはすべてにおいて優先させるべきである。しかしただ長く生きればそれでいいというものでもない。例え短くても見事に生きた人生もあるのではないか。そして、そのような生き様を受け継ぐ人が必ずいる。思いが引き継がれる限り人は死なない。

■「エースをねらえ!」とは?仏教との関係は?

「エースをねらえ!」は1973〜75年(第1部)、1978〜80年(第2部)まで『週刊マーガレット』に連載された、山本鈴美香の漫画作品である。凡庸な高校テニス部員岡ひろみの前に宗方仁なる人物が新コーチとして着任し、宗方の指導の下で才能を発揮しつつ、恋に人生に悩み成長していく物語である。この作品は大ヒットとなりアニメ化もされ、テニスブームを巻き起こした。ひろみの先輩であり目標である「お蝶夫人」こと竜崎麗香の強烈なビジュアルとキャラクターをはじめ、現代においても知名度は高い。しかし宗方やお蝶婦人のイメージがあまりに強すぎてその本来の魅力は語り継がれているとは言い難い。この作品は宗教や文学に造詣の深い作者による、鎮魂と再生、そして救いの物語である。

また、仏教の思想が色濃く反映されており、仏教の2大原則といえる「無我」(無心)と「縁起」(つながり)は一体であることがこの作品を通じて理解できる(注)。

注:山本は現在新興宗教の教祖として活動しているが、本作執筆の時点では仏教本来の思想を正確に表現していると思われる。

■宗方仁の迷いと悟り

宗方仁はかつて将来を嘱望されたテニス選手であった。しかし練習中の事故で選手として再起不能となってしまう。宗方は幼少期に父親が彼と母を捨て他の女性の下に走り、その後母も若くして死去した。こうした事情により荒れた青春を送ったが、テニスに出会い人生の目標を手にしたのである。そのテニスを、まさにこれからが絶頂という20代前半に奪われた。そしてさらに余命わずかであることも明らかになった。宗方は、限りある命と時間を、怒りや憎しみ、呪いなどに囚われていたことを後悔する。
怒りや怨みといったネガティブな感情は一概には否定できない。それらを糧に奮起することもできる。しかしそれらに囚われ執着していては、有限の時間と命を消費するばかりである。宗方は後にひろみに語っている。

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