2021年のオリンピック開催は是か非か コロナ禍で問い直されるスポーツの意義 (2/6ページ)

新刊JP

第二次世界大戦によって中断されていたオリンピックは戦後ロンドン大会で復活したものの、1972年ドイツのミュンヘン大会では、開催中にテロ事件が発生(イスラエルの代表選手11人が死亡)、モスクワ五輪は、ソ連(現・ロシア)がアフガニスタンに侵攻したことに抗議したアメリカの呼びかけで日本はボイコット、金メダル確実と見られていたマラソンの瀬古利彦、柔道の山下泰裕(現・JOC会長)ら178人が‶幻の代表選手〟となってしまう。

翌大会のロサンゼルス五輪は、不祥事続きで大赤字となっていたオリンピックを、テレビ局からの莫大な放映権料や公式スポンサーを募って立て直しに成功、いまにいたる「商業五輪」がはじまる。
こうしてアスリートは、国際政治や戦争、そして経済要因に翻弄されてきたのである。

「本当は、東京五輪が開催されているなかで、みなさんに考えてほしかった。しかし、コロナで延期が決まり、中止も検討されるような事態になって、選手たちが置かれている状況が、奇しくも1940年大会の時と同じになってしまいました。

もちろん戦争とウイルスの災禍を同列に語ることはできませんが、しかし改めて ‶スポーツとは何なのか〟‶五輪とは何なのか〟という問いが、時代を超えて浮かび上がってきました。この本を出す意味合いがよりはっきりした感があります」

この本の著者、NHKスペシャル取材班の一人で、同局のスポーツ情報番組部チーフ・プロデュ―サーの大鐘良一(おおがねりょういち)さんはこう語りはじめた。本書のもととなったドキュメンタリー、NHKスペシャル『戦争と‶幻のオリンピック〟アスリートの知られざる闘い』の取材を始めたのは2018年、放映は2019年の夏。まだ2020年の五輪が盛大に行われることを誰も疑っていなかった頃のことである。

■戦時下では、アスリートの死でさえ戦意高揚に利用された

本書によれば、戦争で命を落とした日本人アスリートは37人いるという。

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