戦国時代、殺された恋人の仇討ちをした悲劇の烈女・勝子の最期【後編】 (2/6ページ)
これで準備万端、果たして流鏑馬が始まりました。勝子は七郎左衛門の番を待ち構え、的の脇に控えます。
「的中!」
小気味よく的が割れ、観衆から喝采が上がる……よもや自分の命を狙う者がすぐそばにいるとは夢にも思わぬ七郎左衛門は、のびのびと矢を射放ち、見事に的中させました。
(……その自慢顔も、今日限りじゃ……!)
七郎左衛門の矢を拾った勝子は、その場でへし折りたくなるのを堪えて回収に来るのを待ちます。
(さぁ、来い……!)
果たして七郎左衛門がやって来て、騎馬のまま勝子の差し出す矢を掴み取りました。が、勝子は放しません。
「おい、寄越せ!」
七郎左衛門が矢を掴む手に力を込めた瞬間、勝子は思い切り矢を引き下ろし、態勢を崩した七郎左衛門は落馬してしまいました。
「あ痛っ……!」
次の瞬間、勝子は懐中に忍ばせていた匕首を抜き放ち、七郎左衛門の胸元目がけて振り下ろすと、刃の先が肉をえぐり、骨を削る感触が伝わります。
(手ごたえあり!)
「ぎゃあ……っ!」
とっさの出来事に会場は騒然となる中、勝子は血に濡れた匕首を振りかざし、大音声に名乗りを上げます。