勝てば何でもありじゃない!源義経の命令で射殺された黒革縅(くろかわおどし)の鎧武者 (2/5ページ)
感極まった武者の舞いを……
あまり感に堪えずと思しくて平家の方より年の齢五十ばかりなる男の黒革縅の鎧着たるが白柄の長刀杖につき扇立てたる所に立ちて舞ひ締めたり
伊勢三郎義盛与一が後ろに歩ませ寄せて御諚であるぞこれもまた仕れと云ひければ与一今度は中差取つて番ひよつ引いて舞ひ澄ましたる男の真只中をひやうつばと射て舟底へ真倒に射倒す
ああ射たりと云ふ人もあり嫌々情なしと云ふ者も多かりけり……
【意訳】
与一のあまりに素晴らしい腕前に感動を抑えきれなくなったのであろう、平家方から50代と見られる黒革縅(くろかわおどし)の鎧を着た男が、長刀(なぎなた)をもって舞い始めた。
これを見た義経の郎党・伊勢三郎義盛(いせの さぶろうよしもり)が、与一に「義経様のご命令ぞ。あの武者も射よ」と伝えると、与一は中差(なかざし。戦闘用)の矢を番(つが)えて黒革縅鎧の男を仰向けに射倒す。
この様子を見た両軍の反応は「あぁ射たな」程度の者から、「いやはや、何と情ない……」と嘆く者まで様々であった。