捨てられた恨みで怨霊に…『今昔物語集』より、復讐に燃える妻から逃げる夫、そして陰陽師のエピソード (3/6ページ)
事情を知った陰陽師は、
「これは非常に難しき案件にございますな……本来なら自業自得と突き放したきところなれど、見捨つるも忍びなきゆえ、まぁ何とか手を尽くしましょう。しかし、相応の『覚悟』はしていただきますぞ」
【原文】
……此の事極めてのがれ難(がた)き事にこそ侍(はべ)るなれ。さはあれどもかく宣ふ(のたもう)事なり。構へ試みむ。但し其の為に、極めては怖(おそろ)しき事なむどする。それを構へて念じ給へ……
「はい、はい……命が助かるなら、何でもさせていただきます……」
陰陽師に連れられて、夫は妻の元へ向かったのでした。
妻の背中で恐怖の一夜「さて、と」
妻の遺体を前にすると、陰陽師はそれをゴロリとうつ伏せにひっくり返します。
「あんた、この背中にまたがりなされ」
「えぇっ!?死体にまたがるなんて、怖くてできませんよ」
「出来ぬなら致し方ない、このまま憑(と)り殺されるがよい」
「そんな殺生な……分かりましたよ。またがりゃいいんでしょ、またがりゃ」
薄気味悪くて仕方ありませんが、生前は散々またがってきた妻の身体じゃないかと言い聞かせ、恐る恐るその背中にまたがりました。
死んでいると思うだけで、不思議と触れることさえ怖くなるもの(イメージ)。
「よいですか。