不透明な物体を通過して反対側に映像を投影できる非破壊ビームが開発される
credit:Allard Mosk/Matthias Kuhmayer
白い砂糖をよく見てみれば、透けているようで透けていない。半透明だ。その理由は、中に進入した光が散乱してしまうからだ。
しかしオーストリア、ウィーン工科大学とオランダ、ユトレヒト大学の合同グループは、この法則が当てはまらないビームを開発してしまった。
そのビームは不規則な物体に進入しても、弱まることはあっても散乱してしまうことはない。そのまま反対側へと突き抜け、入ったときと同じパターンで脱出する。
この性質を利用すれば、普通なら光を遮ってしまう物体越しでも、映像を投影することができるという。
・光の散乱効果を分析
揺れ動く水面を広がる波は、その形状を無限に変化させる。波の性質を持つ光もまた同じこと。不規則な物体の中を通過すれば、その波形は無限に変化してしまう。
『Nature Photonics』(4月8日付)に掲載された研究では、そうした光の散乱効果を記述する数的モデルを構築し、これによって物体の中で乱れてしまった光波を分析している。
たとえば「酸化亜鉛」というナノ粒子がランダムに並んだ半透明の物質がある。その粉で幕を作り、その後ろに検出器を設置した上で、特定の光を照射。検出器がとらえた光を数的モデルで分析する。
すると粉によって散乱しているのに、まるでそこに何もないかのように幕を通過してしまう光波があることが判明したのだ。

酸化亜鉛のナノ粒子 photo by iStock
・散乱不変光モード
その光波を研究グループは、「散乱不変光モード(scattering-invariant light mode)」と呼んでいる。
これは物体を通過する際に減衰して弱くなってしまうものの、光の波形自体はほとんど変わることなく反対側へと脱出することができる。
散乱不変光モードは特別な光だが、理論上、光波の形は無限にあるのだから、ほかにもたくさん見つけられる。あとは、これらを正しく束ねてやればいい。
こうすることで、いくつかの制限はあるものの、物体に干渉されることなく反対側に映像を投影することができるようになる。
たとえば今回の研究では、北斗七星の映像を照射し、酸化亜鉛の幕越しにまったく同じ映像を投影することに成功している。

credit:Allard Mosk/Matthias Kuhmayer
・まったく新しい非破壊検査
散乱不変光モードは、まったく新しい非破壊検査として応用できるそうだ。
非破壊検査というとパッと思い浮かぶのは、病院で利用されているレントゲン写真だ。これは波長が短いX線を使って皮膚を貫通させている。
しかし光が物体を貫通するかどうかは、波長だけでなく、波形も関係している。物体を通過しても波形に影響が出ないビームなら、細胞の奥深くにまで光を届かせられるようになるとのことだ。
References:Indestructible Light Beam: Special Light Waves Created That Can Penetrate Even Opaque Materials/ written by hiroching / edited by parumo