米津玄師「死神」の元ネタになっている落語の「死神」ってどんな話し? (3/7ページ)
「江戸中の医者という医者が匙を投げた患者を、いとも簡単に治してしまった……いやぁあの先生は名医だ……」
大事なのは、病気を治す以上に「名医らしく見せる」こと(イメージ)
この一件以来、男の元には診てくれ診てくれと患者の家族がひっきりなし。どの医者も見放した重病人ばかり回されるものですから、たとえ死神が枕元に座っていたって、神妙な顔で「手は尽くしましたが……」と伝えれば、家族からも不満どころか「最後まで熱心に看て下さり、ありがとうございます」など感謝されるくらいでした。
かくしてブランドが出来てしまえば後はもう黙っていても客は押し寄せ、にわかに金回りがよくなると、男は女房子供など追い出してしまって贅沢三昧の好き放題。
「いやぁ愉快々々……」
などと調子に乗っていたところ、今度はパタッとお客が来なくなってしまいます。
枕元の死神を……「あれ、どうしたんだろう」
どうしたも何も、医者は病気を治すのが仕事ですから(予防医療なんて概念の普及していない時代でした)、病人がいなければ仕事もない訳で、医者が努力して病人を作る訳にも行きません。
さぁ困りました。このままではいよいよ飢え死にです。
最早これまでかと思っていたところ、念願の患者が現れたので往診に駆けつけますが、久しぶりに会った死神が座っていたのは枕元。