「甲子園がないから野球が楽しかったのかも」元球児の作家が見た「甲子園がなかった夏」(2) (3/5ページ)
この点についてどうお考えですか?
早見:5月20日の時点では、何人かは辞めるだろうなと思っていましたし、もっと言えば「辞めてほしい」とさえ思っていました。そうなったらその子も追いかけて、最後の夏をどう終えるかを自分の目で見届けたいなと。
でも、両校の現場を見ていて「辞めないだろうな」というのもわかっていました。「同調圧力があるから」という意見に反論することはできませんが、5月20日の時点で残りはわずか3カ月だったんです。「あと3カ月ならがんばってやり切ってしまおう」という考えも否定されるべきではないと思います。本心ではやりたくないけどやっていた子もいたとは思いますが。
――やりたくないけど、どうせあと3カ月だから、と。
早見:そうです。済美高校のある選手に当時の心境を聞いたら、「毎日やる気になる奴が一人増え、二人増えとなっていって、そのたびに『裏切られた』と思っていた」と話していました。あまりに率直すぎて笑ってしまいました(笑)。
ただ、やりたくないけど辞めるにやめられなかった子はいたかもしれませんけど、最後までやって失敗したと思っている子はいないんだろうなと見ていました。
――済美高校は愛媛県の独自大会の準決勝、星稜高校は甲子園での交流試合が3年生の最後の試合になりました。終わった時の彼らの顔を見てどんな印象を持ちましたか?
早見:これはもう、みんな見事にやり切った顔をしていました。そこもきちんと見極めたいと注意深く見ていたのですが、ベンチ外の3年生も含めて「やらなきゃよかった」という顔をしている人は一人もいませんでした。
でも、こればかりはわかりません。その場のムードもありますから。だから、10年後、20年後に彼らにもう一度話を聞きにいくことが、僕にとっての「宿題」だと思っています。
もしかしたら僕の取材に対しても、本音を明かさないといけない雰囲気に流されて「本音っぽい意見」を言った子もいたのかもしれませんし、何が本音なのか本人たちだってわかっていなかったかもしれません。