「甲子園がないから野球が楽しかったのかも」元球児の作家が見た「甲子園がなかった夏」(2) (1/5ページ)

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『あの夏の正解』(新潮社刊)の著者・早見和真さん
『あの夏の正解』(新潮社刊)の著者・早見和真さん

8月29日に智辯和歌山高校の優勝で幕を閉じた全国高等学校野球選手権大会(以下、夏の甲子園)。

部員のコロナ感染による出場辞退や度重なる雨天順延がありつつ、なんとか全日程を消化した形だが、こうなると中止となった昨年の3年生の無念が今あらためて際立つ。

作家・早見和真さんの『あの夏の正解』(新潮社刊)は、春夏ともに甲子園が中止になり、野球をすることの目標と意味を根底から揺さぶられた昨年の3年生の姿に迫るノンフィクションだ。彼らはどのように甲子園の中止を受け止め、甲子園のない夏を過ごしたのか。現場での取材を通して球児たちとすごした時間について、早見さんにお話をうかがった。その後編をお届けする。(取材・記事/山田洋介)

早見和真さんインタビュー前編を読む

■「甲子園がないから野球が楽しかったのかもしれない」

――この本の一つのハイライトになっているのが、甲子園が開催されないことが決定した5月20日に、監督が選手たちにそれを伝える場面です。早見さんは済美高校でその言葉を聞かれたと思いますが、自分ならばこんな言葉をかけるという考えはありましたか?

早見:なかったです。だから両監督が何を語って、選手たちがどんな顔をするのかに注目していました。

あの時必要とされていたのは、選手たちを納得させられる言葉だったはずです。でも、そんな言葉があるはずもない。実際、5月20日の時点では済美の中矢監督も、あとで聞いたところでは星稜の林監督もありがちな言葉に終始していましたし、選手たちも報道陣の手前聞き分けのいい顔をしていました。あの時点ではあまり意味のあるやりとりはなかった。

だけど、済美は監督が話をしたあとで、3年生だけで室内練習場に行ってミーティングをしたんです。僕はそこには立ち会っていませんが、あとから聞いた話だとものすごく紛糾したらしいです。

――3年生からしたら、簡単に納得できるはずないですよね。

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