恋に臆病になっている女性へ。読書の秋に読みたい「純愛小説」3選 (2/5ページ)

マイナビウーマン

そして、高校時代のある出来事が心の傷となり、恋愛からも遠ざかってしまいます。

しかし、ある1人の男性と過ごした日々をきっかけに、冬子は恋に目覚め、自分の生き方を見つめていくようになります。

その男性とは、冬子がフリーランスになってから、お酒の失敗をきっかけに出会った三束(みつつか)さん。会う回数を重ねるごとに、年の離れた物静かな三束さんと過ごすひとときが、冬子にとってかけがえのない時間になっていきます。

高校で物理を教えている三束さんが「光」のしくみについて語るシーンでは、変化のない日常にきらきらとした美しい世界をもたらしてくれるかのように、三束さんの言葉が冬子の心に響いていく様子が描かれます。

冬子が三束さんのしぐさや特徴を近くから眺める描写は、恋を知ったばかりの少女のように初々しく感じられて、ドキドキしました。

もっと三束さんのことを知りたい、もっと近づきたい。臆病だった冬子の心にも、人を好きになる感情が芽生えます。それは美しいだけではなく、時には激しくドロドロと渦巻きます。

そうした1つの感情だけでは収まらない冬子の「好き」という素直な気持ちに、まさに「純愛」を感じました。

人と距離をとっていれば、自分は傷つかなくて済む。それは冬子が望んだはずの、気楽な生き方。しかし、冬子は同時に「なのになんで私、こんなに寂しいんだろう?」と悩み苦しんでいました。

冬子にとって三束さんは、長く閉ざしてきた心を少しずつ解き放ってくれる、唯一の存在だったのではないでしょうか。冬子の変化を見ているうちに、読者である私は、冬子と全く違う性格の人間のはずなのに、いつの間にか冬子に共感していました。

誰しもが悩む、1人でいることの気楽さと、孤独との葛藤。でも、きっと冬子の心は、「純愛」を知って息を吹き返すでしょう。

愛を求めれば、傷ついてしまうかもしれない。けれど、やっぱり人は1人では生きられません。恋に踏み出せないと思っていても、なんでもない日常に恋は舞い降りてくる。

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