「自分は何も信じられない人だった」川村元気が新作小説で「信仰」をテーマにした理由 (1/5ページ)

新刊JP

『神曲』を執筆した川村元気さん
『神曲』を執筆した川村元気さん

小鳥店を営む檀野家の穏やかな日常は、通り魔事件という悲劇によって終わりを告げた。
息子を殺され、悲しみに暮れる檀野家のもとに、不思議な合唱隊が訪れる。その歌声に次第に救われていく妻と娘。しかし、それは新興宗教だった。

宗教にのめり込んでいく妻・響子を、なんとか救い出そうとする夫・三知男。響子とともに合唱の練習に参加する娘・花音。物語が進むにつれて明かされていく家族の秘密。そして、3人を通して描かれる「神」の正体とは。

『世界から猫が消えたなら』『四月になれば彼女は』『百花』などのベストセラーを発表してきた川村元気さんによる新作小説『神曲』(新潮社刊)は、「目に見えないけれど、そこにあるもの」を信じる気持ちを、「不信」を通して描ききる意欲作だ。
今回、新刊JP編集部は川村元気さんにインタビューを行い、『神曲』に込めた想いについてお話をうかがった。前・後編でお送りする。

(記事・聞き手/金井元貴)

■コロナ禍はエンディングに大きな影響を与えた

――『神曲』について、まずは物語の着想からお聞かせいただけますか?

川村:今はインターネットで検索すると何でも情報が出てくるし、Googleマップを使えば世界中どこでも見ることができる。ふと何でも理解できるような気分になったりもします。

その一方で、「目に見えない力」の価値がすごく上がっている気がするんです。例えば、占いとか、パワースポット、石や星、得体の知れない薬。そういったものに宿る見えない力が信仰の対象になっています。信仰というと昔は神仏が中心でしたが、今は多様化、複雑化しながら、その存在感が増しているように感じます。

「目に見えないものを信じる」というテーマは、小難しく間口が狭いのかなと思って取材を始めたのですが、調べれば調べるほどこのテーマは多くの人にとって切実で、広いなと思ったんですね。

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