リアルタイムでは見えていない。人が今見ているものは、過去15秒までの視覚情報をまとめたもの (3/4ページ)
こうすることで、視覚情報をより少ない労力で、より効率的かつスピーディに処理することができる。
こうした過去の映像に基づく視覚的な認知を「連続野(continuity field)」という。私たちの視覚は、周囲の世界で起きている物事をスムーズに認識するために、あえて正確さを犠牲にすることがあるのだ。
だから映画の微妙な違いがわからない。俳優とスタントマンが入れ替わったことに気づかないのもそのためだ。
[画像を見る]
photo by Pixabay
・過去15秒までの視覚情報処理のメリットとデメリット
こうした視覚の処理メカニズムには、いい面も悪い面も両方ある。
いい面はすでに述べたように、それによって膨大な視覚情報に振り回されることなく、スムーズかつ安定した世界を認識できるようになることだ。
一方で、正確さが重要な場面では、それが命取りになることもある。
たとえば放射線科医は、数百枚というCT画像に映る異常を見つけて、病気を診断しなければならない。
人間の視覚情報処理がリアルタイムでなく、常に15秒前までの情報だけを見続けるのだとすれば、それは重大な病気を見逃すことにもつながるだろう。
私たちの視覚は、想像以上にゆっくりとしか更新されておらず、そのために目の前の小さな変化に気がつけない。
世界が安定して見えるのはそのおかげだが、それは現実の正しさと引き換えとなっているようだ。