浮世絵師・月岡芳年の名作「月百姿 朝野川晴雪月 孝女ちか子」の裏に隠れた悲劇的な物語の結末【前編】 (5/7ページ)
そこで五兵衛の商才は財政逼迫にあえぐ加賀藩の目に止まります。
撰雪六六談 六朔貢 加賀中将 国立国会図書館デジタルコレクションより
あるとき藩の勝手方御用掛として実務にあたる“奥村栄実”は、加賀の豪商たちを集め金策を持ち掛けます。しかし皆、口を閉ざしてしまいます。そこで発言すれば、負担しなければならないことが分かっていたからです。
そのとき、五兵衛が4000両近い御用金を調達すると申し入れました。現在の金額にして約4億円です。その度量を奥村栄実に見込まれ、五兵衛は御用商人として御用銀調達の任務につくことになります。
五兵衛の持ち船だった三隻の北前船が藩の御手船とされ、五兵衛は藩の御手船裁許つまり藩が所有する商船の管理人となります。
藩の公認を得ての海運業ですから、さまざまな恩典が与えられ、また加賀藩お抱えという信用もあり、巨利を得たと言われています。