トランスヒューマニズム・超人間主義 科学は不死を実現するか (1/3ページ)
トランスヒューマニズムは体に機械を埋め込んだり、DNAを操作するなどして科学と技術の力で不死を実現しようという思想である。人体の機械化によって人間が死ななくなる。これは「超人間主義」と訳されるように、人間を超えて神に近づくことである。SFではよく見受けられる世界だが、荒唐無稽と一蹴するには科学・医療技術の発展は加速度を増している。不死の実現は夢物語とはいえない。
■人間と機械の融合
科学技術によって人間の肉体的精神的機能を拡張することは昔から行われている。義肢や人工臓器など、破損、機能停止などした人体の一部を人口物で代替する技術の精度は飛躍的に進化している。最近ではアップルウォッチなどのウェアラブルデバイスの普及が目覚ましい。時計型や指輪型などの「身体に身につけるスマホ」は、さらに機器を体内に埋め込むインプラント技術「インプランタブルデバイス」として確立しつつある。既にスウェーデンの国有鉄道では、体内に埋め込んだマイクロチップを乗車券として使用できるシステムが導入されている。日本でも今年(2022)ペットの迷子防止などのためのマイクロチップを埋め込むことが義務化された。
さらに脳と機械をつなぐ技術「BMI」(ブレイン・マシン・インタフェース)の開発も進んでいる。脳波によってコンピューターを動かしたり、コンピューターから脳に刺激を送って視覚覚や味覚等を与えることができる技術・機器の総称である。この研究にはイーロン・マスク氏も参画している。このような科学技術の超進化が順調に続けば、人体の機械化、サイボーグ化は夢ではないどころか、むしろ必然的な帰結と思われる。人体が交換可能な機械となればそれ不死の実現ということになる。
またトランスヒューマニズムは、科学の超進化が機械に労働をさせて人間は余暇を楽しむ「不老」ならぬ「不労」社会をもたらすとも実現すると予言している。人間は死、病気、障害、さらには労働からも開放されるというのだ。
■死を拒否する思想
トランスヒューマニズムは「死」を否定する。無神論、唯物論である。彼らは霊魂の不滅も死後の世界も信じていない。死は生命に対する侮辱であるとさえいう。だからこそ科学の力で死を克服しようとしている。