銃で4人を殺害した元大学教授。殺人者が科学論文を発表することは許されるべきなのか? (1/6ページ)

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科学は全ての人の為のものなのか?それとも道徳的に正しい人の為のものなのか?
カナダのコンコルディア大学の機械工学科の准教授だったヴァレリー・ファブリカントは、研究を巡って同僚と対立し、同僚4人を殺害した後、獄中から60本近い科学論文を発表した異色の研究者だ。
この一件は、科学者の研究内容を評価する際に、その行動や思想をも評価するべきか? という倫理的ジレンマを浮き彫りにする。
科学者がみな立派な人物であるに越したことはないが、必ずしもそうではない。では、そのことが彼らによる科学的発見を否定する正当な理由となるのだろうか?
・優秀だが性格に難があった元大学准教授
ヴァレリー・ファブリカント(1940年生まれ、現在82歳)は、もともと旧ソ連(現ベラルーシ)の研究者だった。
ところが気難しく短気、破壊的な性格の為、多くの問題を起こし、職を解雇され、祖国にいられなり、カナダへと移住した。
1979年に移住し、翌年の1980年からケベック州モントリオールにあるコンコルディア大学の機械工学科の元准教授となった。
ファブリカントは科学者としては優秀だがトラブルメーカーだった。自分の問題はすべて他人のせいにし、学生を怒らせることもしばしばだった。
ある研究を巡って同大学の同僚2人と激しく対立した彼は、同僚の名前を全ての学術論文から抹消すべきだと裁判所に訴えを起こした。
ところが法廷での目に余る傍若無人な態度により、法廷侮辱罪に問われてしまう。また更に、ファブリカントは大学の終身在職権を求めていたがそれも拒否され、大学側は彼に解雇の意向を伝えた。
思い通りにいかないことに対するファブリカントの怒りは、やがて彼を殺人へと駆り立てることになる。