「満席の東横線で立ち上がり、足元にかがみこんできたお婆さん。そのまま無言で僕のスーツを...」(奈良県・60代男性) (1/2ページ)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Rさん(奈良県・60代男性)
その日、Rさんは面接に向かうため、新品のスーツを着て電車に乗り込んだ。
すると、真後ろに座っていた見知らぬ年配の女性が突然、Rさんの足元にしゃがみこんで......。

<Rさんの体験談>
新卒者の就職活動のニュースを聞く度に恥ずかしく思い出す、45年以上前の話です。
当時、私は最初の会社面接のため、下ろしたてのスーツをきて、一人暮らしをしていた都内の下宿から東横線・中目黒経由で東銀座に向かっていました。
スーツの仕付け糸を...車内は混みあってはいませんでしたが、空いている席はなかったのでつり革に掴まって立っていました。
すると、私の真後ろに座っていた年配の女性が、突然立ち上がって私の背中で何やらごそごそやり出したのです。
「えっ」
と思って振り返ると、彼女が何をしていたのかすぐに分かったので、何も言わずに向きなおりました。それからは、ただ元の姿勢で外の景色を見つめたままいました。
その年配の女性は、かがみ込んで私のスーツの仕付け糸を歯で切り離しほどいてくれたのです。

当時、田舎出の純情青年だった私は人前だった為にただただ恥ずかしく、振り返ってお礼を言うことができませんでした。
その女性は、「初めてスーツをきて面接行く」というその時の私の状況を全て察しておられたのだと思います。一言もおっしゃらず、黙って次の駅で下車されました。