トルコで発見された870万年前の類人猿の化石がヒト亜科の起源について疑問を投げかける
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「ヒト亜科」の動物、すなわちヒト族とアフリカ類人猿の起源は、古人類学でもっとも熱い議論が交わされているテーマの一つだ。
ダーウィン以降、もっとも一般的なのは「アフリカ起源説」だ。これは、ヒト族とヒト亜科の化石で一番古いものがアフリカで見つかっていることが根拠となっている。
だが、最近では「ヨーロッパ起源説」も提唱されている。
最近、トルコで発見された870万年前の類人猿の化石は、私たちを含むヒト亜科の祖先は、900万~700万年のヨーロッパで進化し、それからアフリカに移住したことを示しているとする研究結果が発表され、波紋を呼んでいる。
・ヒト亜科はどこで誕生したのか?
今回のテーマは「ヒト亜科」だ。
その定義は必ずしも一定ではないが、ここでは私たちも属する「ヒト族」と、ゴリラ・チンパンジー・ボノボといった「アフリカ類人猿」で構成される大きなグループを指す。
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photo by Pixabay
最初のヒト亜科の祖先は一体どこで誕生したのか?これまで、最も有力とされてきた説は「アフリカ起源説」だ。
だが最近では、ヨーロッパと中央アナトリア(トルコ中央の地域)で発見された後期中新世(約1100万年~500万年前)の化石にもとづき、「ヨーロッパ起源説」も提唱されている。
その根拠の一つとされるのが、「アナドルビウス属(Anadoluvius)」だ。
ヨーロッパとアナトリアでしか見つかっていない最初期の化石類人猿で、地中海東部では少なくとも230万年前からさまざまな仲間がいたことが知られている。
だが、『Communications Biology』(2023年8月23日付)に掲載された研究では、彼らはもっと前からそこにおり、500万年以上かけて進化してきただろうこととが明らかにされている。・870万年前の化石類人猿
今回の研究の鍵を握るのは、2015年に中央アナトリアにあるチョラキエルレル(Corakyerler)遺跡で発見された「アナドルビウス・トゥルカエ(Anadoluvius turkae)」の骨だ。
それは頭蓋骨の一部で、顔面の構造のほとんどと、脳頭蓋の前部などが綺麗に保存されている。
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アナドルビウス・トゥルカエの頭蓋骨の一部 / Image credit: Sevim-Erol et al., doi: 10.1038/s42003-023-05210-5
アンカラ大学やトロント大学の研究チームは、特殊な方法でその顔のほぼ全てを再現し、詳しい分析を試みた。
そこからにわかったことは、アナドルビウス・トゥルカエが大型のオスのチンパンジーくらいの大きさ (50~60 kg)で、主に乾燥林の地上で過ごしていただろうということだ。
手足の骨はありませんが、顎や歯、一緒に発見された動物、彼らが暮らしていた環境の地質学的指標から判断すると、森林で暮らす現生の類人猿とは違って、アナドルビウス・トゥルカエはおそらく比較的開けた環境で生活していたと思われます(アンカラ大学 アイラ・セヴィム=エロル博士)顎は頑丈で、歯は大きく、厚いエナメル質におおわれている。こうしたことから、根や根茎のような地面の下にある硬い食べ物を食べていただろうことがうかがえる。
また彼らの周囲には、キリン、イボイノシシ、サイ、レイヨウ、シマウマ、ゾウ、ヤマアラシ、ハイエナ、ライオンといった動物がいた。今日ならアフリカの草原や乾燥林によく見られる動物たちだ。
今回の研究によると、こうした動物たちは、800万年前以降のどこかの時点で、地中海の東部からアフリカに広まったのだという。
「現代アフリカの開けた地域に生息する動物相が、地中海東部からやってきたことは以前から知られていましたが、今回、アフリカ類人猿とヒト属の祖先もそうであることがわかりました」(セヴィム=エロル博士)
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2015年にチョラキエルレルで発見されたアナドルビウス・トゥルカエの化石/ image credit: Ayla Sevim-Erol・アナドルビウス・トゥルカエは最初期のヒト亜科
今日、最古のアフリカ類人猿もヒト族もアフリカ起源のものしか知られていない。
しかしさまざまな分析から、両者の祖先はヨーロッパと地中海東部からやってきたと、研究チームは結論づけている。
たとえば、アナドルビウス・トゥルカエのほか、近隣のギリシャとブルガリアから発掘された化石類人猿(オウラノピテクス属/Ouranopithecus、およびグラエコピテクス属/Graecopithecus)は、解剖学的にも生態学的にもさまざまな点で最初期のヒト亜科に近いグループとされている。
今回分析されたアナドルビウス・トゥルカエは、そうした中でももっとも保存状態のいい標本であり、ヒト亜科がヨーロッパで誕生し、その後アフリカに広まったを示す強力な証拠であるという。
研究チームの分析によると、トルコおよびギリシャ・ブルガリアの化石類人猿は、西ヨーロッパと中央ヨーロッパの祖先から進化と考えられるという。
また、より包括的なデータは、ギリシャとブルガリアの類人猿もヒト亜科であることを示している。
こうしたことが意味するのは、ヒト亜科全体がヨーロッパで進化して多様化したということだ。・ヨーロッパ起源説の証拠探しは今後も続く
トロント大学のデビッド・ベグン教授によると、ヨーロッパ起源説を認めない人たちは、証拠もないのに、アフリカにいた初期類人猿の一部がヨーロッパに渡ったのだと考えたがるという。
だが、今回の発見は、それとは違うことを示している。
こうした発見は、アフリカ類人猿とヒト族はアフリカで進化したという古い見解とは対照的です。今回の発見は、最初のヒト亜科は900万~700万年前のヨーロッパで誕生し、ほかの多くの哺乳類とともにアフリカに広まったという仮説を支持するものだ。
ヨーロッパとアナトリアでは初期のヒト亜科の遺骨がたくさん発掘されているのに対して、アフリカでは700万年前になってようやく最初のヒト亜科の骨が現れます(トロント大学 デビッド・ベグン教授)
ただし、それは決定的なものではない。
より確かなことを明らかにするには、ヨーロッパとアフリカから800万~700万年前の化石を探し、この2つのグループの関係をはっきりさせる必要があるとのことだ。
References:A new ape from Turkiye and the radiation of late Miocene hominines | Communications Biology / 8.7-Million-Year-Old Fossil Suggests Ancestors of Humans and African Apes Evolved in Europe | Sci.News / written by hiroching / edited by / parumo
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