大河「べらぼう」蔦重と誰袖それぞれの“夢” 〜本音と本音が溶け合ったあの名シーンを考察【後編】 (3/8ページ)
けれど、吉原で田沼意知(宮沢氷魚)と出会ってからは、すっかり意知に夢中になり身請けを迫ります。そして、その“夢”を叶えるため意知の計画(松前藩の抜け荷の証拠を掴む)を成功させるため、お座敷スパイを引き受けたのでした。
「どうして自分にそこまで身請けしてほしいと迫るのか」という問いに「吉原一の二枚目好みなので、その顔を眺めて過ごしたいから」などと、艶っぽい表情で答えてましたが、「本心はどこにあるのかな?」という感じがする誰袖。
どんなに奔放に自由に振る舞っているようにみえても、やはり「遊女」という仕事をしていることに変わりはありません。好きでもない客に体を売らなければならない地獄は、瀬川花魁(小芝風花)のときにも感じましたよね。
だから、「花魁を辞めて、早く吉原を出たい」、「どうぜ請けされるなら“いい男”のほうがいい」という願いと「お金がなさそうな蔦重よりも、身分の高いお武家様がいい」という思惑が混在しているように見えたのです。
けれど、意知に「危険な仕事だ」と言われた時、今までの「うふっ!」という軽いキャラから、ぐっと声のトーンを落とし「ここは、日々が戦いにござりんすよ?騙し合い、駆け引き、修羅場、わっちの日々はきな臭いことだらけにありんす。」と身を乗り出した時。誰袖はただ、軽い気持ちで言っているわけではないのだなと感じました。
そして、その決意を知った意知が、自分の名前を名乗り「見事抜荷の証を立てられた暁には、そなたを落籍いたそう」と言ったとき、ほんの一瞬「え?」と真顔になったのに気がついた人も多いかと思います。
蔦重が「あいつはいつも芝居がかっているから」と評していたように、いつも芝居がかっていて、どこに本心があるのかわからない誰袖の一瞬の「本当に?」という驚いた表情に、計算高く見えるけれど「誰袖は、本気で意知が好きなのか?」と感じるような場面だったと思います。