【べらぼう】史実では異なる佐野政言の切腹。世直大明神の「辞世の句」や社会的影響を紹介 (3/7ページ)
「どうか刃物を!武士の情けを!」
「……然らば、どうぞ」
三方の上には、確かに刃物が載っています。しかし少し離れたところに置かれます。
(何だ、取りにくいな……)
政言が刃物を取ろうと身を乗り出した瞬間、たちまち首が斬り落とされたのでした。享年28歳。
佐野政言の辞世?
幕府の記録によれば、佐野政言が切腹の場で辞世を詠んだ様子はありません。
しかし世の中には政言の辞世とされる歌が伝わっており、そのいくつかを見てみましょう。
卯の花の 盛りもまたで(待たで) 死手の旅 道しるべを 山時鳥(ヤマホトトギス)
※『営中刃傷記』など
卯の花の 盛(さかり)を捨(すて)て 死出の旅 山時鳥 道しるべせよ
※『鼠璞十種(そはくじっしゅ)』など
【歌意】ウツギの花盛りを待たず、死出の旅に発つこととなった。山で啼くホトトギスが、旅の道しるべとなるだろう。
卯の花は卯月(うづき。旧暦4月)の由来ともなる花で、4月が始まったばかりの3日に世を去る政言が「花盛りを待ちたかった」と名残を惜しんだのでしょうか。
ホトトギスは不如帰(帰るに如かず=帰りたい)とも書く通り、もう二度と戻れない≒死を象徴する鳥とも言われています。