『べらぼう』二人の固い絆が切れた──歌麿にとっての”招かれざる客”は愛する蔦重だった…【前編】 (4/6ページ)
蔦重は、たしかに、耕書堂を建て直すために儲かる作品が欲しいことには間違いありません。けれども、唐丸時代からの約束「俺がお前を当代一の絵師にする」も、叶えようという気持ちも忘れていません。
「今、江戸で(商売人相手に)これだけの大量の絵を受ければ、歌麿の名は必ず当代一の絵師として広まる」と分かっているので、負担がかかるのは承知の上で依頼しています。
けれども、その気持ちは歌麿との間でかなりの温度差が……。
もちろん、歌麿にも絵師として成功したい欲もあったでしょう。けれど、本心は、つよに語ったように「蔦重と二人で仕事をして作品を残す」「二人で綺麗な(せみのような)抜け殻を残したい」ということ。この想いは、蔦重には分からないでしょう。
「もっと自分と向き合ってほしい」という願い
大量の絵の発注をしに、歌麿の家を訪れる蔦重。「俺一人では無理」と怒る歌麿に、「この際、弟子に描かせてはどうだ?」と言います。弟子にあらかた描いてもらい直すところは直し、名前だけいれれば立派な歌麿の作品だ。と。
これは、こだわりの強い歌麿にとっては言われたくない言葉だったでしょう。かなり険しい表情になります。
歌麿は、長年の付き合いの絵師・北尾重政(橋本淳)に「弟子に描かせることはどう思うか?」と相談しました。重政先生は、多くの弟子を育ててきているだけあり「昔、発注が多くて手が回らないときは頼んでいたよ。