『べらぼう』招かれざる客は”蔦重の子供”…唯一無二の存在ではなくなった歌麿の決別【後編】 (7/9ページ)
無理に作った笑顔で「蔦屋とは最後になる仕事」を引き受ける
頭を下げる蔦重に長い沈黙の後、「仕方中橋(しかたなかばし)」と地口で答える歌麿。「義兄さんの言うことは聞かねえと。俺は義弟だし」と、笑顔で答えます。非常に痛々しかったですね。
「恩に着るぜ義兄弟」と涙ながらに手を握り頭を下げる蔦重を見つめる歌麿。カメラは背後から映しているので表情はわかりません。このとき、どんな表情をしていたのでしょう。
怒りや絶望は通り越し、蔦重とは袂を分つ決意を秘め、口元だけ笑みを湛えているのか。
すべての感情を失ってしまった、冷たい表情をしているのか。
「さよなら、蔦重」と別れを告げる決意の顔をしているのか。
今まで蔦重は、幾多の試練を乗り越えてきました。
天才的なひらめきで、トレンドをいち早くキャッチし売れ筋を見極める才能を持ち、困難にぶつかっても突破してビジネスを成功させる粘り強さもあります。
けれども、自分のアイデアの実現に熱中すると、アーティストの心情には鈍感になり、いろいろな人を怒らせてきましたね。