なぜ鼠径ヘルニア手術は「入院」が主流なのか――日帰り年500件超のクリニックの試み (2/3ページ)

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通院3回・滞在4時間で完結する「日帰り腹腔鏡手術」

松下氏によると、日本では鼠径ヘルニア手術の多くが、いまも入院治療で行われている。「入院は患者さんにとって、身体的・精神的・社会的な負担になり得ます。仕事や育児、介護など、日常生活をいったん止める必要があるからです」と話す。

同氏は、入院では事前準備や検査、各種手続きなど手術前後の工程が多くなるとみる。これに対し、同院では初診で診察と検査を行い、2回目の来院で手術を実施する。滞在時間はおおむね4時間ほどで、術後1週間前後の経過観察を含め、計3回の来院で治療を完了する流れを組んでいるという。

同院が主軸とする腹腔鏡手術は、腹部に約5ミリの小さな穴を3カ所開けて行う術式だ。従来の切開手術に比べ、術後の痛みや回復期間の面で患者負担を軽減できる可能性があると松下氏は説明する。

ただし、日帰り手術はすべての患者に一律で適用できるわけではない。全身状態や合併症の有無、帰宅後の支援体制などを踏まえた適応判断が欠かせず、術後に異変が生じた際の連絡体制を含めて運用の質も問われる。利便性が高まるほど、適応の選別と安全管理の両立が現場に求められる構造でもある。日帰り手術の拡大は、こうした条件整備とセットで初めて意味を持つ。

件数より問われる「標準化」 日帰り手術は地域医療に定着するか

松下氏によると、同院の年間手術件数は500件超に達しており、急性期のDPC対象病院の公表統計と比べても多い水準だという。「件数そのものを目標にしているわけではありません。結果として症例が集まり、その中で手技や説明の改善を続けてきました」と話す。

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