橋下市長「衆院選出馬」を大阪市職員が歓迎する意外な理由

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「都構想で積み残したことはない」とキッパリ
「都構想で積み残したことはない」とキッパリ

 安倍総理は11月18日、衆議院を解散し、総選挙を行なうと表明した。同日、大阪では、橋下徹大阪市長(維新の会共同代表)が国政進出の準備に入った。かねてから橋下市長が推進している「大阪都構想」で対立する公明党を標的とし、公明党現職・佐藤茂樹前厚生労働副大臣の選挙区、衆院大阪3区から出馬する意向だ。

 この動きにあわせ松井一郎大阪府知事(維新の会幹事長)も同16区からの出馬に向けた準備を整えた。この選挙区は公明党の北側一雄副代表の地盤として知られる。

「橋下・維新 対 公明」の戦闘開始の号砲が鳴らされた18日の大阪市役所内で市職員から話を聞いた。

大阪市職員叩きで民間企業の雇用待遇をさらに悪化?

「国政でも頑張って下さいとしかいえません。これで勘弁してもらえますか?」

 必死に笑いを堪えながら残念そうな顔を装い、目には嬉し涙を溜め、こう話すのは大阪市役所本庁勤務のある課長代理だ。

 大阪府知事から大阪市長に転じて以来、何かにつけて「民間流」を謳い、市職員給与の見直し・カット、ノルマ制導入で市役所を引っ掻き回した橋下は、市職員にとっては「悪魔のような存在」(前出・大阪市課長代理)に他ならない。

「週刊誌には大阪市役所職員が『新3K職場』と書き立てられたこともあった。橋下市長は選挙民の前で公務員叩くパフォーマンスで人気を取ってきた。でも、そのツケは選挙民に及ぶことが市長はわかっておられない」(前出・同)

 橋下が市長就任以来、進めてきた徹底した人件費コスト削減は、「ろくな仕事もせず高い給料を貰って安定した生活を送っている公務員」をぶった切り、選挙民は拍手喝采。だが、そこに落とし穴はそこにある。

「公務員が『安定した職と給与』を保障されなければ、民間の給与水準と雇用待遇はさらに悪化します。大阪市職員の給与と雇用待遇が最低条件。民間はこれを上回る努力をせよといわなければ、民間企業は大阪市職員よりも劣悪な労働条件、雇用待遇を余儀なくされる。市長も選挙民もそれが理解できていない」(同)

市政行わず!市長としての実績は何もない

 実際、橋下が市長として大阪市役所で行ってきたことは「市役所改革」だけで、「市政を行なったわけではない」(前出の大阪市課長代理)というのが大阪市役所職員の多くの認識だ。

「市長として貧困層やブラック企業問題にも取り組めたはず。ところが市長の手足となって動く市職員を叩いて萎縮させただけ。大阪市の経済が強くなったとか雇用が改善されたとかそういう話は聞かない。ただマスコミを通して話題を作ったに過ぎない」(同)

 この大阪市課長代理は続けて、「府知事から市長に転じたときを思い出すとわかるが、大阪府でも大阪府庁の改革をしただけで府政を改革したわけではない。何の実績も残さず大阪府を放り出して市長に転じた。今回も同じ構図だろう」と自身の心情を語る。

大阪市職員「天敵を悪魔が潰してくれるので大歓迎」

 一方で、大阪市役所職員は橋下の国政進出を手放しで喜んでいるわけではない。民意を受けて当選した以上、首長たる者はその任期は全うするべきだ。市長職を任期途中で投げ出すことへの批判の声は数多い。

「大阪では府知事よりも市長のほうが実質的な権限も大きい。だから府知事から市長に。で、市長よりも国政へ――ですか。今度は何を投げ出すんですかね? 国ですか?」(同)

 維新の会では、橋下市長と松井知事の国政進出に伴い、目下、後継者が検討されている模様。橋下に散々いじめられた大阪市職員たち。もう維新の会出身市長はもう勘弁かと思いきや意外にもそうでもないらしい。

「公明党を標的に出馬されることは大歓迎です!」

 大阪市職員にとって公明党は、橋下市長就任前の古くからの“天敵”だった。その天敵を“悪魔・橋下”が潰しにかかる総選挙。天敵か悪魔。その軍配はどちらに上がるのだろうか。

(取材・文/陳桂華)

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