元少年A「手記」の波紋…触発されるサイコパス予備軍

デイリーニュースオンライン

“二次被害”が懸念される
“二次被害”が懸念される

 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件、通称「酒鬼薔薇聖斗事件」。その加害男性「少年A」が書いた手記が、今波紋を呼んでいる。

 出版元の太田出版から、遺族に出版前の事前連絡はなく、遺族は精神的苦痛を与えられたとして出版中止を求めている。また、すでに少年法に守られる年齢ではないが、「匿名」として実名を明かさない点も問題視されている。

 この本が出版されたことで、出版の是非、表現の自由、犯罪者が自分の犯罪を吐露してお金を儲けることの是否など、様々な問題が取りざたされているが、それ以外の問題も軽視できない。

酒鬼薔薇聖斗と名古屋の女子大生

 今年1月、名古屋で起こった、宗教勧誘の女性を殺害した女子大生は逮捕後、

「人を殺したかった」

 と供述している。彼女は逮捕前に多くの犯罪者についてツイッターなどで語っているが、その中でも特に「酒鬼薔薇聖斗」を崇拝していた。

「7月7日!!酒鬼薔薇聖斗くん32歳の誕生日おめでとう♪」

 と、ツイートし、Twitterの酒鬼薔薇聖斗botから返信があっただけで、

「酒鬼薔薇botから返信もらえた死ぬほど嬉しい」

 と感激するほどだ。

 このように、世の中には「少年A」=「酒鬼薔薇聖斗」を崇拝する人間が少なからずいる。

本によって影響を受ける人格とは

 本の内容、そして文体は自己陶酔感と自己顕示欲を丸出しにしたかのようなもの。多くの人は嫌悪する内容だが、「本を読んで影響を受けてしまう人もいる」と犯罪心理学者は語る。

「世の中にはサイコパス、反社会性人格障害といわれる、善悪の基準を持たない人たちがいます。欧米では25人に1人が、日本では200〜300人に一人は、このような人格を持っていると言われています。ただし、サイコパスまでいかない予備軍まで入れれば、その数はかなりの数になる。そして、今回の本が彼らに多大な影響を与えてしまう可能性があります」

 件の手記は、そんなサイコパス予備軍にとって一番危険だと続ける。

「サイコパス予備軍の多くは、自我が形成途中の子どもたちです。彼らは非常に影響を受けやすく、善悪の基準を持つ途上です。今年3月、イスラム国の処刑映像に触発されて、東京都立川市の中学3年生の男子生徒がヤギを襲うという事件もありました。今回、少年Aが手記を出版して世間の注目を集めることにより、サイコパス予備軍の人が憧れや羨望を持ってしまう可能性があり、これが新たな犯罪の誘発にもなりかねません」(同前)

 物議を醸している少年A の手記。その闇はあまりに暗く、深い。

(取材・文/タナカアツシ)

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