何でもアリの新感覚ホラー! 白石晃士監督『超コワすぎ!』最新作発売記念インタビュー

デイリーニュースオンライン

『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-02 暗黒奇譚!蛇女の怪』 発売/販売:アルバトロス 税抜価格:3,800円 (C)ニューセレクト
『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-02 暗黒奇譚!蛇女の怪』 発売/販売:アルバトロス 税抜価格:3,800円 (C)ニューセレクト

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』『カルト』がニコニコ生放送やGyaOで放送されたことをきっかけに、ネット上で話題沸騰中の白石晃士監督作品群。その白石監督の最新作『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE02 【暗黒奇譚!蛇女の怪】』が8月5日発売となりました。

『コワすぎ!』シリーズは、投稿者から送られてきた怪奇映像を元に制作スタッフが取材を行ううち、彼らもまた怪異に巻き込まれていくというドキュメンタリータッチの映像作品シリーズです。これまでのシリーズでは口裂け女や人喰い河童、トイレの花子さんなどに挑んできました。レギュラーの登場人物は3名。

『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-01 恐怖降臨!コックリさん』(C)ニューセレクト

工藤仁(くどう・じん):『コワすぎ!』制作スタッフのディレクター。根っからのDQN気質で、作品のためなら軽犯罪を犯すことも厭わず、大抵のことは暴力で解決しようとするが、いざ怪異に直面すると誰よりも速く遠くまで逃げる。だが、腹を据えると怪異を金属バットやパンチで殴ろうとするなど、男らしい一面も見せる。

市川実穂(いちかわ・みほ):制作スタッフのアシスタント。比較的良識があり、工藤が何かやろうとするごとに隣で嫌そうな顔をする。ちょっとでも危なそうなところには必ず先に行かされるが、それが積み重なった結果か、蛇を素手で掴む程の非常に肝の座った女性へと成長した。

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章』(C)2015ニューセレクト

田代正嗣(たしろ・まさつぐ):制作スタッフのカメラマン。白石監督本人が演じる。『コワすぎ!』シリーズは田代の撮影している映像という設定なので、彼が画面に現れることはあまりない。

 個性的な3名のレギュラーキャラが、今回、『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE02 【暗黒奇譚!蛇女の怪】』で挑むのは蛇女伝説。蛇女(?)のつぐ巳ちゃんに恋した投稿者に対して、工藤ディレクターが金属バットを適宜用いながら恋愛指南を行うというシリーズ初の恋愛モノとなっています。

 そこで今回はあらたなる試みに挑戦した白石監督に作品のことを伺って来ました。
(※以下のインタビュー内容に『FILE02』等の白石監督作品に関する若干のネタバレがあります。ご注意ください)

コワすぎ!は何でもアリ

──『FILE02 暗黒奇譚・蛇女の怪』ですが、まさか本当に恋愛を取り扱うなんてビックリしました。今までのシリーズからは想像もつかないというか、工藤さんは恋愛指南とかそういった細やかな心の機微とは全く縁の無さそうな人だと思っていたので……。

白石「『コワすぎ!』は何でもアリですからね。フェイクドキュメンタリーという枠の中でいろんなことをやってみよう、というスタンスの作品ですから」

──その一環としての今回の恋愛?

白石「そうですね。ホラーというもの自体が色んな要素をぶち込める娯楽ジャンルだと思ってるので。恋愛だったり友情だったり、はては政治的なものだったり、あるいは社会的な犯罪だったりとかですね。過去のホラーの傑作にも大体そういう要素が入っているので、自分もそういう要素は入れていきたいなと思いながらやっています」

バイオレンスvs怪奇現象

──他のホラーの話が出ましたが、他のホラー作品と比べて、『コワすぎ!』だけの魅力という点はどこにあるのでしょうか?

白石「主人公のディレクター工藤ですかね。非常にうるさくて、わがままで、暴力的で、高圧的なくせにビビリだったりで、あんまり信頼出来ないうえに嫌なやつという。普通だと主人公にするとお客さんの反撥に遭って嫌がられるようなキャラクターなんですけど、それが『コワすぎ!』の中では非常に面白く、魅力的なキャラクターになっているところが一つの見所でしょうか」

──確かに特殊な主人公ですよね。監督自身からここまでボロクソに言われる主人公なかなかいないですよ。でも本当にDQN気質だし……コックリさんも脅迫しようとするし……。普通のホラーだと怪異に遭う側は大体ビビってばかりなのに……。

白石「そうですね。あと日本だとホラーの主人公はフラットなキャラが多いですよね。どこにでもいる、そんなに目立たない、性格もおとなしいキャラが多いですが、『コワすぎ!』ではそうではない、近付くと酷い目に遭うようなやつが主人公で、そういうヤツが怪異に立ち向かっていく、というか、突っ込んでいく」

──触れたくないものと触れたくないものが激突してる感じ!

白石「バイオレンスと超常現象の衝突というか、そこがちょっと他と違うところかな」

爆笑できるホラーの秘密

──工藤さんは本当に凄まじいですよね。証言者が口をつぐんだらとりあえず殴って喋らせようとするし……金属バットを持って口裂け女を追っかけたり……。そういった工藤さんの行動にホラー映画にもかかわらず劇場では爆笑の連続なんですが、監督はホラーと笑いのバランスはどう考えて作られてるんですか?

『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-02 暗黒奇譚!蛇女の怪』(C)ニューセレクト

白石「いや、自分は笑わせようと思って作ってはないですね」

──えっ、そうなんですか!

白石「ただ、キャラクターって愛嬌がないと視聴者が好きになれないので、工藤にしろ市川にしろ愛嬌は持たせてるんですよ。その愛嬌からくる言葉とか行動とかで当然ユーモラスなところも出てくる、っていうことですかね。現象としては起きてること自体は恐ろしいことなので……それに対するキャラクターのリアクションですよね、皆さんが笑ってしまうのは。私自身は笑わせるつもりはないんですが、キャラクターがそういうリアクションをするなら笑う人もいるよね、というのは理解しています。けど、ギャグじゃないんです。キャラクターの愛嬌がそう感じさせてるんです」

──笑いを取ろうと思って脚本を書いているところはない、ということですか。

白石「そうなんですけど、でもキャラクターが動いて、『これはどう考えても笑っちゃうよな(笑)』っていうのはありますね。『コックリさん』の時のニンニクのシーンとか」

なぜ市川は転職しないのか

──笑いが起こると言えば、劇場では工藤が何か言うたびに、横で市川が心底嫌そうな目で工藤を見ていて、その度に笑いが起こっていました。『超コワすぎ!』になってから『コワすぎ!』の時よりも市川の工藤を見る視線が露骨に嫌そうなんですが、二人の間に何かあったのでしょうか?

『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-01 恐怖降臨!コックリさん』(C)ニューセレクト

白石「市川を演じている久保山さんが、実際に『コイツ本当に嫌いだな』と思ったそうで……。前の工藤だと、もしかしたら信頼できるのかな、みたいな、嫌なヤツだけど信じていい部分もあるのかな、と思っていたのが、超コワすぎの工藤にはそれがない、という感じでしょうか。すると芝居が自然とそういう風になってしまった」

──それは『超コワすぎ!』の世界では、『コワすぎ!』の世界と違って制作チームはロクな映像が撮れていないから、工藤のディレクターとしての信頼度が下がったということでしょうか?

白石「いえ、工藤のキャラクターが違ってきたせいでしょうね。『コワすぎ!』の工藤は過去の残酷な出来事を受け止めて生きてきましたが、『超コワすぎ!』ではそれがないので、ある種深みのない人間になってしまったんです。やっぱり人は悲しい目に遭っていた方が人にも優しくできるんですよ」

──ええっ! 工藤さん、優しくなってあれだったんですか……。

白石「そうですね! あれで最大限でした!!」

──工藤さん、『超コワすぎ!』になってから、すごくビビリになってて、ちょっとでも危ないところには必ず市川を先行させるとか徹底してるんですが、それもやはり過去の問題がなくなったせいで……。

白石「そうですね。問題がなくなったせいで、逆に人間としては問題になっている(笑)」

──市川は逆に力強くなりましたね。『FILE02』でも工藤さんがビビってる中、木刀を持って外に飛び出すとか、相当アグレッシヴ。

白石「自然とそうなっちゃったんですよね。『コワすぎ!』の時のように、工藤が命懸けで市川を助けるために行動を起こす、みたいなことが考えにくくなってて。そうなると、市川の方がアクションを起こさないと……」

──市川はなんであんな劣悪な職場なのに転職しないんですか? 怪奇現象には巻き込まれるし、上司は工藤さんだし……。

白石「たぶん金払いがいいんですよ。あれ作ってるの工藤、市川、田代の三人だけじゃないですか。工藤自身も色々作業をしてるし、人数を減らすことで予算を下げて、その分一人あたりへの分配を高くしていると思うんですよね。だからまず金ですね」

──金ですか!

白石「それと『超コワすぎ!』では市川自身にも兄が怪奇現象に巻き込まれたという設定がありますから、もともと超常現象を信じていて、今の仕事の内容にも親和性があるんでしょうね」

「霊体ミミズ」と異界の恐怖

──監督の作品には色々な恐怖の要素がありますよね。頭のイカレた人や、異界の存在、敗北する霊能力者。頭のイカレた人は特にたくさん出てきますが、あれはイカレたというか、常人の理解し得ない真実を知ってしまった人が、傍からはイカレてるように見えるのでしょうか。『ノロイ』の堀さん(※「最強の霊能力者」とされるが近所の住人からはイカレポンチ扱いされている)のように。

白石「多くの場合は真実を知ってしまい、それを口にしていますね。ただ、異界のエネルギーが干渉しているので、精神的に不安定な状態にはなっていると思います。精神的に不安定な上に、通常では理解されないような真実を語っているので、普通の人には頭がおかしい人に見えてしまう」

『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-02 暗黒奇譚!蛇女の怪』(C)ニューセレクト

──『FILE02』の蛇女のお母さんもそういう感じなのでしょうか。

白石「そうですね。昔、蛇的な存在にレイプされたのか、恋愛だったのか知らないですけど、そういうことでつぐ巳ちゃんを産んでしまった、ということですね。それに加えて精神的に不安定になってしまい……」

──監督の色々な作品で「異界」が匂わされていますよね。そして、異界の象徴として『コワすぎ』にも『カルト』にも『オカルト』にも出てくる"霊体ミミズ"。『ノロイ』にも名前だけ出てきますよね。あれが出てくる作品の世界観は全部同じという理解で良いのでしょうか? 僕の中では、『カルト』でNEOさんが戦っていた異界勢力を、別の場所で『コワすぎ!』の工藤さんたちが活躍して収束させた、という理解をしているのですが……。

(※霊体ミミズ:白石作品において「異界」とのアクセス時に見られる霊現象の表現。黒いミミズのようなウネウネしたものが人の口から出たり、空を漂ったり、花子さんの下半身で蠢いたりする)

白石「そういう理解をしてもいいかもしれませんが(笑) 私は特に決めてないですね」

──どの作品の世界にも霊体ミミズに象徴される「異界」がベースにあるのでしょうか?

白石「うーん…………そうとも言えないですね。決めて作ってるわけではなく、自然とそうなっているだけなので。結果的にそうなっているものが多いですね。……人間の幽霊を描くのがあんまり興味が持てないんですよ。どうせ元が人間だったらたかがしれてるよね、って思っちゃうので。そこに興味が持てない上でホラーを作るとしたら、どうしようかな?ってところから、『異界』とかそういう事になった感じです」

──「異界」にはどのような恐怖があるとお考えですか?

白石「人間に理解できないものこそが怖いと思うんですよね。だから、自分が描いていても自分にとっても理解ができないものを描いた方がいいかなと。そっちの方が恐ろしいというか、そういうものの方が自分は興味を持って描けるなと思っていて、自然とそういうものになってるんだと思います」

──監督の作品では、目の前の怪奇現象や都市伝説から、まず一回民族学的な切り口に移る展開がよくありますよね。調査の過程で歴史的な言い伝えや村の奇習に辿り着く。あれは「怪奇現象の背後にある人間には理解できないもの(異界要素)」が、今、現代のこの時にだけ怪奇現象を起こしているのではなくて、大昔から人々は異界の要素に触れてきて、それを人はよく分からないものとして忌避したり祭り上げたりしてきた、という感じなんでしょうか。

白石「そうですね。クトゥルーと同じで、昔はそういう得体の知れない存在が世界を支配していて、いつの間にか人間の世界ができてしまった、今の世界ができてしまった、ってだけで。異界の存在は何時でもこっち側に出てこれるというか、常に存在はしていて、何かの弾みでこっち側の世界を侵略してしまうかもしれない、っていう」

──異界がベースにあって、そこにひょっこりと、イレギュラー的に今の世界ができてしまったという感じでしょうか。

白石「どっちかというとそうですね。この世界自体が確立された安心できる世界ではなくて、不安定で実は危うい世界なんだ、って思えると、ちょっと怖いじゃないですか」

──足場が揺らぐ感じですか。なるほど、そこに異界の恐怖を見ているわけですね。

白石「僕は痴情のもつれの幽霊が出てきて、ああだこうだみたいな話をしてもしょうがないなと思っちゃうんで(笑) 映画としてはこういう世界観の方が面白いなと思ってやってる感じですかね。そういうのじゃないとやる気が起きないってのもあるんですけど」

雲水さんは何故敗れたのか

──監督の作品にもいわゆる霊能者が出てきますよね。『カルト』の龍玄、雲水の師弟コンビや、『コワすぎ!』に出てきた道玄さんなど。いずれも相応の実力者として描かれながら怪異の前に敗れていきますが、僕は本来ホラー作品では頼りになるはずの「実力ある霊能者」が簡単に敗れて死んでいくのにすごく恐怖を感じてまして。

「霊能者が勝てるような存在だとたかがしれているよな、という、根本的にそういう思いがあるので霊能者はどうしても勝てないんですよね。工藤は『AKIRA』の金田とか『ゴーストハンターズ』の主人公の影響が強いんですけど、要は馬鹿の勢いが一番強いというか。もちろん現実ではそうじゃないと思うんですけど、映画の中では原始的な生命力みたいなのが一番強かったり、頼もしい存在になったりする……映画の中でそれを感じると自分はワクワクして感動するので、そういうのをやりたいなあと思ってます。霊能者が死んでしまっても、馬鹿が勝つというか」

──『カルト』のNEOさんの強さもそういう感じなのでしょうか?

白石「NEOにしても頭良いかっていうとそうじゃなくて、勘で生きてるって感じですよね。勢いだけってところもある。知性を感じさせるような年配の霊能力者(龍玄)や誠実な霊能力者(雲水)が負けてしまっても、NEOなら勝ててしまう。『正しい人』って枠に収まらないキャラクターにこそ真の強さがあるみたいな。自分の中にそういう感覚があって、それが人間の強さなんじゃないかなって思いがあるんです。でも、『まともな霊能者が出てきたら負ける法則』が自分の中で出来つつあって、見てる人も気付いてきてるので良くないかなと思ってるんですが(笑)」

──雲水さんや龍源さんはどういう理屈で怪異と戦っていたんでしょうか? どういうエネルギーというか、たとえば異界と通じるエネルギーで異界と戦っていたのですか?

白石「彼らがやっていることは人間の世界での呪術の法則に基づいた戦い方ですよね。一つの法則化されたものです。呪術というのはそういうものなんですが、それでも人間が考える法則じゃないですか。人間が一生懸命どれだけ考えても、向こう側(異界)の理屈は価値観が違うんです。なるべくそれにも対応するようにはしてあるんですけど……。人間の霊とか動物の霊とかその辺には通じるんです。でも、異界のエネルギーというのは存在は知ってるんだけど、彼らも対処のしようが分かってなくて、自分たちの使える最大限のもので命懸けで戦うんだけど……例えば、アリがどんなに人間に対抗しようとしてアリなりの法則で祈ったりしたところで、人間はアリの存在に気付くことさえなく踏み潰すじゃないですか。それに近いかなって思ってます。価値観とか世界があまりに違うので」

──『コワすぎ!』に出てきた道玄さんもそんな感じで敗れていった……?

白石「道玄は異界の存在は知ってるんですけど、対抗する力は自分はもともと持ってない、ってのは分かってる感じですかね。ある程度は通用するんでしょうけど。アリにとって人間が異界だとしたら、アリ(道玄)は人間の吐く息くらいだったら岩陰に隠れてやり過ごすくらいはできるけど、人間が手を出してきてバン!とやられたらもうおしまい、みたいな。そういう感覚ですね」

***

『超コワすぎ!』の今後のシリーズですが、白石監督のスケジュールの都合上、『FILE02』の後は続編まで二年ほど間が空くかもしれないとのことです。ニコニコ生放送で行われた「生でコワすぎ!」のラストで工藤さんは精神に異常をきたしてしまい、異常な呟きを最後にツイッターの更新も停止してしまいましたが、

 白石監督いわく、「もう少ししたら工藤が退院してツイッターも動き始めるかも」とのことです。いちファンとして工藤さんのいち早い復帰をお祈りしております。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

「何でもアリの新感覚ホラー! 白石晃士監督『超コワすぎ!』最新作発売記念インタビュー」のページです。デイリーニュースオンラインは、オカルトインタビュー映画連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る