週刊少年ジャンプ『ベストブルー』連載打ち切りの理由を考察「競泳を漫画で描く難しさ」 (2/5ページ)

デイリーニュースオンライン

主人公はなんで競泳してんの?

 まず最初の「主人公、高校進学前に特訓する」のフェイズです。主人公の青野くんは六年前、テレビでインターハイのメドレーリレーを見て、「4泳法それぞれで全て高校記録」を出して優勝した天海高校に感動して競泳を志します。

 競泳に向かうその強い気持ちが序盤のフェイズの中心であり、また、「主人公のキャラクターを立てる」という意味では、彼の強い気持ち、競泳への情熱・執着が青野拓海というキャラクターの核になるはずでした。

 しかし、「テレビを見て興奮して競泳を始める」というのは、考えてみるとどうもピンと来ない。いや、もちろん実際にそういうきっかけで競技を始める人はいるのでしょうが、漫画としては説明不足に感じます。テレビを見て主人公が何に感動したのかがよく分からないのです。その時の天海高校のアンカーに憧れたと言ってるけど、アンカーの何に憧れたのかが分からない。例えば、ダイナミックな泳法だとか、美しいストロークだとか、そういうのに対する感想が一切ないのです。

 なので、なんで主人公がそんなに競泳に執着するのか分からない。そもそも競泳って別にやっても楽しそうに思えないので、執着する程の楽しさを説明してくれないと主人公に共感できないんです。野球とかサッカーなら、「逆転ホームランを放った」とか「ドリブルでゴボウ抜きにした」とかの個人技に憧れるのは想像しやすいのですが、競泳ってみんなきれいなフォームで、筋肉鍛えて、一生懸命泳いでるだけでしょう? という印象があります。他の選手と比べて「何が凄いと思って」青野くんは天海のアンカーに憧れたのでしょうか? 何に憧れた結果、競泳に情熱を燃やしているのか。そこが分からない。ぶっちゃけ、アナウンサーの煽りが巧くて興奮しただけじゃないの?と思ってしまう。

「競泳の競技性に惹かれたんじゃなくて、新記録樹立の盛り上がりに興奮しただけなのでは?」となると、主人公のキャラクター性と「競泳の魅力」がリンクしないんですね。競泳への情熱・執着が主人公の核のはずなのにそこがあやふやになってる。たまたま見てたテレビが陸上リレーで、そこでも新記録を樹立してたら、青野くんは今頃陸上やってそうな気がするんですよ。

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