週刊少年ジャンプ『ベストブルー』連載打ち切りの理由を考察「競泳を漫画で描く難しさ」 (3/5ページ)
判別困難! 分かりにくすぎる新キャラたち
主人公のキャラクター性に関して上記の問題を孕みながらも、序盤はまだ作者の平方先生の軽快なリズム感が発揮されていて悪くないのですが、いかんせん華がありませんでした。
「漫画はキャラクター」とよく言われます。華のあるキャラクターが読者の吸引力となるのですが、キャラクターってビジュアルとか設定とかだけじゃなくて、他者との関係性においても構築されていくんですね。Aさんの隣にBさんを出すことで、Bさんへの対応を通じてAさんのキャラクターが構築されるわけです。
で、主人公に華があるのがベストなんですが、主人公と関係しているキャラクターがそれまではほぼコーチしかおらず、コーチとはさほど魅力的な関係性を築けていませんでした。水泳部に入り、部活の仲間ができてからが勝負だったわけです。そして、次のフェイズ「高校に進学し部員と出会う」で、一挙に10名ものネームド部員が登場したのですが……
これがとにかく分かりづらい!!! いかんせん競泳です。みんな裸だし(服装で差別化できない)、キャップを被るし(髪型で差別化できない)、ゴーグルを着けるしで(顔の造形も分かりにくい)、誰が泳いでて、誰が喋っているのかが全然分かりません。いや、キャップから漏れる僅かな髪の毛や口調と名前を照らし合わせれば一応の識別は可能なのですが、漫画ってキャラクターの正体を必死に特定しながら読むものではないですからね……。
これがアニメなら、まだ色が着いたり声優で区別したりできるのでしょうが、漫画ではあまりに厳しい。この辺で「競泳って漫画に向いてないなあ」と読者はしみじみ思い始めるわけです。