吉田豪インタビュー企画:渡辺淳之介「BiSでは高熱が出ようが何しようが絶対に休ませなかった」(2) (3/3ページ)
■本当はインフルエンザでも活動させたい
渡辺 あと、あれもどうかと思う、彼氏が原因でアイドル辞めるヤツら。あれアイドル続けてたほうが彼氏とうまくいきますからね。価値が下がってだいたい1週間ぐらいで別れます(笑)。辞めないほうがおまえがその男を引き止められるんだぞって思うんですけど、彼氏も辞めろって言うんでしょうね。
──ジェラシーで。
渡辺 ホントにバカだなと思って。
──ヲタとつながってアイドルが辞めるのもそうですよね。ヲタもアイドルのあなたが好きでつながりにいってるのに、辞めてどうすんだよっていう。
渡辺 稀有な例としてうまくいったところもあるんだと思うんですけど、だいたいダメでしょうね。そう思うとホントにみんなちぐはぐなことをするんですけど。そこでいうと、僕はちぐはぐなことをしてないのかもなと思います。ずる賢いというか、こすいというか。そういう意味で僕はたぶん相当嫌なヤツですね。プライベートは結構優しいんです。相手を突き放さないし、連絡もマメだし。
──アイドルと接するときとは違って。
渡辺 そうです。でも、そうすると、どんどん相手がメンヘラチックになって、もっと欲しいもっと欲しいになっちゃうんで、適度に突き放すことはすごく大事だと思って。だから、体調不良のためライブに出ないとかありえないと思うんですよ。そんなヤツは辞めたほうがいいんです、アイドルやってる必要ないんで。BiSでは高熱が出ようが何しようが絶対的に出すようにしてたんですよ。インフルエンザは業界としてルールがあって出しちゃいけないらしいんで、それはしょうがないんですけど。
──そのルールがなかったら出してるんですか?
渡辺 ルールがなかったら出します(キッパリ)。
──ダハハハハ! インフルエンザぐらい伝染ってもいいじゃんって(笑)。
渡辺 伝染ってもいい(キッパリ)。だって出なきゃいけないじゃないですか。そういうところでいうとウチはかなり厳しいですよ。熱が出たからとか体調が悪いとか、そういうのはまったく無視なので。
──ボクも自分に関してはそうですね。プロなんだから体調が悪くたってテレビにもイベントにも出るし、原稿も書く。
渡辺 最近の子たちって仕事してても「ちょっと高熱出して2日間倒れちゃってたんで」とか平気で言いますけど、「締切はその日って言ってたじゃん」「いや、会社のパソコンなんで持ち出しとかできないんで」って、だったら会社に行けよって感じじゃないですか。それが正義になっちゃう感じは、この業界で言えばないなと思ってて。アーティストとして上に行きたいと願うなら、それくらいの本気は見せないといけないだろうなと思ってて。
──マルベル堂でボクのプロマイドが売られてるんですけど、あれボクが39度の熱を出したとき、地下アイドルの子がプロマイドを撮られるロケに呼ばれたときのヤツなんですよ。フラフラになりながらロケに行ったら「あなたも撮りましょう」って言われて、ボーッとしてノーとも言えないまま撮られたら、その女の子たちのプロマイドは店頭から消えてボクだけ売られ続けているっていう。
渡辺 そういうところが違うんだと思うんですよね。僕は熱でつらそうにしてても「はい、立って!」って言うんで。だから僕の事務所の子たちは結構強いかもしれないです。練習ですら休ませないんで。
──そうなんですか。
渡辺 だってスタジオ代がもったいないじゃないですか。逆に言うと5人で練習するって言っててひとり欠けるんだったら、俺がキャンセル代を払ってもいいから練習やめてっていう話をしてて。だから結構みんな牽制し合ってやってるし、緊張感あるかもしれないです。
プロフィール
音楽プロデューサー
渡辺淳之介
渡辺淳之介(わたなべじゅんのすけ):1984年、東京都出身。高校を中退した後に大検を取得して早稲田大学に入学。大学卒業後、音楽業界へ。数々の過激な活動で知られるアイドルグループBiSを手がけて大きな話題を獲得する。BiS解散後は、自身の会社である株式会社WACKを設立。アイドルグループBiSHやGANG PARADEなどをプロデュースしている。今年の4月にはその半生を追った書籍『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(宗像明将・著 河出書房新社)が刊行された。また、このインタビュー後の7月8日に新メンバーを募集し元リーダーのプールイと共にBiSを再始動させることを発表してファンを驚かせた。
プロフィール
プロインタビュアー
吉田豪
吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(?)新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。
(取材・文/吉田豪)