WELQ問題の真相を読み解く(2)「買収の経緯に関して極めて不透明」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談 (3/3ページ)

デイリーニュースオンライン

■買収に至る経緯

山本)敢えて言いますけど、この調査報告書に書いてあることは、実際のDeNAで起きていたことの3分の1くらいしかフォロー出来ていないと思います。iemoの状況でいうと、あるベンチャーキャピタルから出資を受けていたが、2014年には新たな資金調達を必要とするようになっていた、と。それをDeNAは約15億円で買うというジャッジをするんです。この15億円というのがポイントなんです。

上からはKPIを押し付けられて、下からはコンプライアンスを守れっていわれて、難しい、でもやらなきゃいけないという話で、でもどうも厳しそうだという事になってくるんですけれども。

報告書では次のように書かれています。村田氏は、iemo 社のM&Aの売り込みなどをするために、福岡市で開催されたスタートアップイベントに参加しました。守安氏から近況を問われた村田氏は、iemoで資金調達を検討している最中であることを話し、守安氏はMERYでまとめサイトの業績をみて、キュレーション事業に大きな将来性を感じていましたと。そんな中、村田氏から事業説明を受けてiemoの将来に魅力を感じ、iemoのビジネスモデルを横展開することで、キュレーション事業が伸びるだろう、と前向きに考えるようになりましたと。量産すれば伸びるだろうと、この時点で守安さんは思ったんですね。

村田氏は、DeNAとの間だけでなく、iemoの買収に興味をもっていた競合他社と並行して協議をおこなっていたとあります。報告書には対象企業も金額も書かれていません。ヒヤリングできなかったのだとすると第三者委員会としてイケてないと私は思いますが、このとき福岡で複数の会社に村田さん売り込みをかけていて、その時の投資依頼書があります。これ、某キャピタルなんですけれども。この時iemoへの提示金額は8,000万円です。それが、守安さんのイケるぞ判断で15億に化けたことになります。

三上))えっ!全然違いますね。

山本)報告書では続きが書いてあります。守安氏は競合他社との価格競争に敗れた苦い経験を踏まえて独占交渉を要求し、村田氏は15億円という金額を提示。守安氏はこの時点でiemoを買収する決意を固めていたため、買収の是非について戦略投資推進室の見解を求める事はなかったと。

三上))村田マリ氏に丸め込まれた…、と?

山本)恐らく。このへんで大きなミッシングリンクがあるんですけれども。明らかに、会社が資金調達を必要としているフェーズであって。もちろん大きくしたいっていうのはあるんですよ。ただ原則として、でもあとiemoは何ヶ月で資金がショートするよね、っていうタイミングで、増資しなくちゃいけない話じゃないですか。だからこそ、村田さんはiemo存続のために喉から手が出るほどキャッシュが欲しかった。もしくはバイアウトして、より安全な出口戦略を考えていたことは、周辺の話からは理解ができるところです。その中で出てくる条件と、こういうベンチャー界隈ででてくるお金の条件って、違うんです。

要は、我々の残キャッシュがこれから燃え尽きそうだから増資してねっていうのと、お前らの事業戦略有利だから買わない? っていうのと、当然足元の見られ方が違うわけです。要するに、村田さん率いるiemoはカネがないから増資先を求めていたフェイズなのでしょう。そうなってくると、ここで出てくる「守安氏はiemoの買収する決意を固めていた」というのは何なんだという話なんです。そこを調べるのが第三者委員会の責任じゃないのかと。なんでこんな風に守安さんが独断で話を固めてんだよと聞かなきゃいけない。書いていないんです。我々にとって絶対知りたいところじゃないですか。

三上))経営幹部がムダなカネを使って失敗しているんだから、そこをやんなきゃいけない。

山本)そうです。この買収の経緯に関しては極めて不十分な報告書だと思うんです。書ける事は他にまだいっぱいある。あと、第三者的に、iemoは他にも当たっていたんです。ペロリはかなりまだ頑張っていて、キャッシュも残っていたという話ですが、iemoはあと8ヶ月くらいで存続をかけた勝負をするかもしれないね、っていうところで増資依頼をしている会社なので、15億円なんてつくわけがない。ただのインテリアサイトですよ。そんなカネあるなら大塚家具買えやっていう話になる。

買収の経緯について、このジャッジが何故、どのように行われたかに関しては、第三者委員会がちゃんと調べなきゃいけないし、彼女はどこに持って回っていたのか。それこそ具体的な社名を伏せてX1社、X2社でもいいから、そこで当たらなきゃいけないんです、調査委員会自体が。でも当たっていないんです。実際に村田さんが増資を持ちかけた某キャピタルのそこの担当を知っているんですが、いやDeNAの第三者委員会、来ていないと思いますよ、と。

三上))この第三者委員会は、村田マリ氏とどのくらいやりとりをして、村田マリ氏からどのくらいヒアリングしているんですかね?

山本)良い質問ですね。私もそこは疑問に思っているんです。彼女が取締役になるにあたって、iemo社の法務担当の指摘内容を受けて、法的リスクがあるということを明言しています。問題がある画像を挿入している記事を削除する、問題のある画像を許諾した画像に差し替える、引用元から直接リンクを貼る方式にする。

三上))自社のサーバーに保存しなくて、直リンにすりゃあいいじゃんっていう、とても頭にくる…。

山本)お前らがトラフィックの代金負担っていうやつですね。それを平気で調査報告書に書いてきたという点では、ウェブ業界のイロハも知らないで、お前らふざけんなと思ったんですけれども。

それはおいといて、報告書にはこうあります。弊社はDeNAという大企業の人的・金銭的支援を受けてiemoの事業を大きくしたいと考えた結果、DeNAの買収計画を受け入れた後も周り続けたと。普通に条件良かったカネじゃないかと思うんですが、売却したあともiemo社に関わり続けるつもりであったと。

その上で守安氏は電子メールで2014年7月31日、南場氏らに対して、村田氏をDeNAの執行役員にしたいとの意向を伝えたところ、買収直後に執行役員へと登用する事について社内の公平感・納得感を得られるのか、シンガポールにおいて勤務しながら執行役員としての職務を全うできるかという懸念などが示されたと。

しかし守安氏は、社内にスピード感、健全なコスト意識、挑戦マインドを吹き込む役割を村田氏に期待しており…。期待してしまいましたね。

DeNAが「永久ベンチャー」を標榜しながらも、大企業病に陥っていることに危機感を示していた南場氏らも、iemo社の持つスタートアップのマインドがDeNAに注入され、DeNA社内に、失われかけていた「永久ベンチャー」の雰囲気が呼び戻される事を期待し、2014年9月19日、同年10月1日付けで村田氏を執行役員とする旨が取締役会で承認されたんです。まあ何にも考えていなかったんじゃないかと。ここの経緯は村田さんも南場さんも同じ内容を言っているので、これは事実でしょうと。

で、さきほどiemo社とペロリ社の位置付けについては申し上げたとおり、SEOなどについては中川さんがやり、メディアの横展開やスケーラブルな運営に関しては村田さんがやる、という形での棲み分けになりますと。

それと、「iemo社およびペロリ社の買収後のキュレーション事業の構想」っていうのがあるんですけれども、守安氏は“iemoの買収を足がかりに、iemoのビジネスモデルを、iemoの「住」という領域以外にも横展開することで、キュレーション事業を、短期間で、大きな収益をもたらす事業に成長”させようと考えていましたと。そうした意味では、そもそもペロリを買収した時点で気づけよっていうところがあるんですけれども、村田氏は、横展開に相性が良さそうな領域や横展開に適していない領域を提案するなどしていましたと。

その後ペロリの買収が具体化し始めると、「キュレーションメディアを核とした新規事業展開について」と題する経営会議資料では、キュレーション事業の横展開に関する構想がより具体化したと。この時点でハマっちゃったんですね。報告書はここまでですが、守安さんのミスジャッジは最初で全て躓くようにできていたのかもしれません。

だからそういった意味でいうと、調査委員会の報告書に書かれている内容は、買収後の社内の事象に関してはおそらくその通りだろうと思います。ただまあ、買収の経緯は調べようはあったんじゃないのかなあと思うんですけれども。そのうえで、第三者委員会が本当はメディアについてあんまりよくわかっていないまま、背景分析したんじゃないかと思うわけです。ちょっと報告書の結論や経営状態に関する記載が少ないところをみると、ビジネスモデルも採算面でどこまで行けると思っていたのかはっきりしませんし、メディアにある程度関わった人間からすると、ピンとこないんですよね。

三上))メディアって、コストがかかるのって人ばっかりじゃないですか。歩いて探して時間かけて、っていう事でしか出来ないビジネスじゃないですか。たぶんそれを実感されていないから、こういうわけのわかんないKPIの考え方になっちゃうんじゃないのかな。

山本)KPIを、技術を投入して人間のやる作業をより楽にさせる、という考え方ならいいんですけれども、スケールを大きくするのとはまた違うじゃないですか。BuzzFeed Japanで人工知能を大量投入して、記事が3倍増えますから売上もPVが3倍になりますかっていったら、ならないわけじゃないですか。

古田))ならないですねえ。メディアの場合だと、我々が出しているコンテンツがどういうオーディエンスに届いているのか、どういうチャンネルを通じて届いているのか、それでオーディエンスの人たちはBuzzFeed Japanに対してどういう認識をもつのかまで分析する。そうやってメディアを成長させていくわけですけど、第三者委員会の側でいうと、先程から山本さんが説明されている部分が確かに物足りないというか。もっと知りたいという欲求が出てきますし。

山本)上層部、南場さんや守安さんはそういうメディア事業に関してさほど詳しくなかっただろうと。メディアに関しての知見がない第三者委員会の方が、メディアに関して知見のなかった南場さん、守安さんにヒアリングしているんだろうなっていうことを強く感じます。今回報告書の目次をみると、第10章に背景分析っていうのがあって、僕らからすると、まずいの一番に採算についての内容が来るはずだと思うんです。何故そうしたかったのか、どこにビジネスモデルの勝算をみたのかっていう、ものすごく大事なイシューなんですよね。

要は安い値段で、それこそクラウドワークスさんやランサーズさんに記事を作らせたのは何故か。何故ならば記事1本あたりこれだけの単価で、SEOやサーバー運用についてどういう利益構造になっているからそれは成立するのか。スケールさせるために、なぜ10個っていうものをやろうとしたのか。これ、全てコストじゃないですか。今回いわゆるコストに関わるものがほとんど入っていないんです。唯一好意的に解釈するなら、10個やってみて、こうも赤字だったから、利益出ていない前提で話を進めていいでしょ、っていうことがあったのかもしれないですけれど。

でも利益が見込めて、将来的に1兆円の時価総額にするんだ、っていう前提で事業計画を組んだ投資だった以上、そこは営業利益率を出していかないと、彼らのここに勝算があったと思っていましたというのがわからないわけです。さっきのiemo15億円っていうのも、買収の決意を固めたのは何故だっていうのも言わないわけですよ。じゃあ守安さんの責任はどこにあるんですか、経営判断間違えましたね、コスト判断してどうだったらあなたの判断が正しかったんですか、っていうところまで検証できない。そうでなかったら、背景分析にならないじゃないですか。

今回の調査報告書に関しては、悲しいくらいビジネスモデルに関する数字が詰められていません。じゃあSEOするのにどのくらいのお金がかかるんですか、サーバー運用するのにどのくらいのお金がかかるんですか、著作権を無視する事によってどのくらいのコストが削減できるんですか、記事1本あたりのコストはどのくらい下げられるんですか。実は何ひとつ書いていないんです。仕入れコストがはっきりしなければ、また利益率がどうなのかが分からなければ、彼らが何に勝算を見て投資判断し、事業運営したのかが理解できないことになります。

で、これはメディア側の人は特にそうだと思うんですけれども、1本あたりの単価って何となくわかるじゃないですか。このくらい広告が入って、1本あたりの収支がこうなって、それをウイークリーで回したらこうで、マンスリーで回したららこうで、って考える。そのあたりの目算が報告書には一切書いていないのです。もっと言うと、DeNAのメディア事業の経営計画に村田マリはそれほど関与しなかったようです、どうやら。ただ、その有無さえも書いていないんです。事業を管理する中で、このP/L(損益計算書)ですって普通持ってますよね。それが一切、ないんですよ。

三上))あの、言っていることが利益じゃなくて、ずっと時価総額じゃないですか。経営のことわからないけど、時価総額の前に利益を見なきゃいけないもんなんじゃないんですか?

山本)もしくは利益に転化する見込みを数字的に示しておかないと、事業計画にならないです。唯一、2016年3Qに黒転するだろうという見込みっていうところしか、調査報告書に書いていないんです。それはどのくらいの規模で、発行している記事数は何本で、取引先はいくつからいくつくらいで、どこの会社と提携して、そこの利益率がなんぼで、っていうのが出ていなかったら、わかんないのです。報告書には、見事に書いていない部分ですね。

誰を守ろうとしてるんだ、って思ったんです、最初。まあ誰も守ろうとしていなくて、単純に調査委員会の側がそういう経営的なマターに関して、あまり関心がなかっただけなのかもしれないですけれども。常識的に考えて、そこが一番知りたいわけですよ。

要はDAU(編注:デイリーアクティブユーザー)が時価総額換算いくらになっているんだというところさえも書いていないんです。だとしたら、他の様々なメディアがある中で、そこと比較したときにどういう数字になっていたから、こういう判断だったのか、という事がわからない。これって第三者委員会がやっている事からすると、それをどこまで信用していいかわからないという話になっちゃうんですよね。せっかくあれだけ関係者にヒヤリングしたのに、もったいないなと。

その上で、SEOだとかサーバー運用だとかライターの記事執筆にかけるコストっていうところの言及が皆無なので、守安さんがどういう情報をもってジャッジしたのかという点に関しては、守安さんの「感覚」であったとしか言いようがなかった。彼は何をベースにその10個っていうキュレーションサイトを立ち上げろって村田さんに言ったのか。正確には9個ですけれども。そういったところがわからないままなんですよね。だから多分、なんの解決にもならない報告書なんじゃないかって思っちゃうんです。

三上))裏付けとなる数字がなければ、そこでどういう判断になったのかが分かりませんよね。

【第二回了】

WELQ問題の真相を読み解く(1)「DeNAだけが謝って終わる問題だったのか?」~やまもといちろう×古田大輔×三上洋特別鼎談

WELQ問題の真相を読み解く(3)「ネットメディアは是正されるのか?」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談

古田大輔

バズフィード・ジャパン創刊編集長。1977年福岡生まれ、福岡育ち。早稲田大政経学部卒業後、放浪生活を経て、2002年朝日新聞入社。京都総局を振り出しに、社会部記者、東南アジア特派員、デジタル版編集などを担当。2015年10月にBuzzFeed Japan創刊編集長に就任。趣味は仕事。
https://twitter.com/masurakusuo?lang=ja

山本一郎

個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一報、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。介護を手掛けながら、夫婦で子供三人と猫二匹、金魚二匹を育てる。
http://lineblog.me/yamamotoichiro/

三上 洋

セキュリティ・ネット事件・スマートフォン料金を専門とするITジャーナリスト。テレビ・ラジオ・雑誌などでの一般向け解説多数。読売オンライン「サイバー護身術」、アスキー「5分でわかる時事セキュリティ」などを連載。Ustream、ニコニコ動画などネット動画のプロデュースも手がけている。
http://www.sv15.com/

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