「宮澤さんは外交カードとして使われた」世田谷一家殺害事件14年目の真相(後編)

デイリーニュースオンライン

警視庁ホームページ「あの事件は今」より
警視庁ホームページ「あの事件は今」より

 事件からちゅうど14年が経ったが、いまだに解決に至っていない世田谷一家4人殺害事件(以下・世田谷事件)。前編では、宮澤さん宅のすぐ横にある「祖師谷公園」の拡張工事を東京都が決定し、事件の9カ月前の2000年3月に宮澤さんは東京都から立退き料の一部を受け取っていたこと記した。また事件直後、暴力団関係者がある会合で犯行との関係性を匂わせる発言をしていたことも紹介した。

土地売買のトラブルか…世田谷一家殺害事件14年目の真相

部屋の中で起こった予想外の出来事とは

「あの犯行はまちがいなく韓国人か中国人の組織的犯罪だ」(某暴力団組織の幹部)

 この幹部の証言を要約すると次のような事件の様相が浮上してくる。

 本来の目的は宮澤さん宅にあったカネ(もしくが預金通帳)の回収だったが、犯行現場で家族に騒がれた犯人が任務遂行のために全員を殺した。パソコンを長時間操作していたのは、パソコンの中にお金の使途や関係会社に関する詳細なデータが残っており、そのデータを消去もしくは転送するためだったという。

「いろいろな人間がいる。脱北者や金稼ぎに来た元軍隊経験者、諜報機関上がりとかさ。銃刀の扱いは無論、言語やパソコンにも精通している。ただし今回の事件を見ると犯人は素人に近い。手口がやたらと派手なだけでなく自分も怪我までしている。証拠も残しすぎていてプロとは思えない。おそらく下部組織の個人的な関係で、それこそ留学生とかそんなレベル」(韓国の諜報関係者)

 この人物が世田谷事件の実行犯を「そんなレベル」と断定する根拠は次の三点である。

(1)殺害を目的としたプロならば自分の凶器や武器を必ず使用する(犯人は量販店で購入した包丁と宮澤さん宅にあった包丁を凶器として使用)
(2)殺害方法が荒すぎる
(3)犯人特定に繋がる可能性がある遺留品を現場に残しすぎている

「プロが依頼されたのならば綿密に計画を立てる。家の見取り図、時間などそれこそ証拠も残さない。この事件の手口は軍隊や諜報機関では決して教えない。ただ犯人はやはりアジア系犯罪組織に所属している人物であることは間違いないだろう」(同)

 ビジネスは“アウト・ソーシング”が主流となりつつある。リスクや煩雑さを伴う労働は外部に委託する。このアウト・ソーシング化の波は何もビジネス界に限った話ではない……日本の裏社会もまたしかりなのだ。

「こうした犯罪に日本人は使わない。暴対法で上まで引っ張られるし、1人懲役に行かすとなんやかんやで3000(万円)からの金もかかる。その点、外国人犯罪集団に依頼すれば相当に安い金でできるし、後腐れも無い」(前出の暴力団幹部)

 外国人犯罪集団が「カネの回収」の依頼を受け、実行犯に犯行を指示。だがここで狂いが生じた可能性を筆者は推測する。その狂いとは実行犯の思惑である。実行犯は「カネの回収とパソコン内のデータの消去(もしくは転送)」で済ませたかったに違いない。凶器も量販店で調達した事実も「凶器は脅しのため」という犯人の意図が見え隠れしている。だが、その凶器を使わざるを得ない状況に陥った──一見残忍に見える犯行も予想外の展開に対応できなかった素人ゆえの結果だった。つまり、素人ゆえの支離滅裂な対応が結果として“残忍な犯行”となったのではないか。

ヒントは2年後に起きた福岡一家4人殺害事件?

 こうした犯罪組織集団は宗教団体や日本の暴力団と関係が深い各国の“圧力団体”に所属する。依頼を受けある程度の報酬を受け取った後に祖国に帰るという。もちろん偽造パスポートなどを使用し来日しており、日本の今の法整備では簡単に逃げきれるらしい。

「仮に特定できても、暴力団と警察の組織上層部はある程度繋がっているし、外交問題などで日本が手を出しづらいのを承知している」(同)とも言う。

「実際に世田谷の事件ではないが、ある有名な殺人事件がそう。調べればすぐわかる事件だよ。その事件の実行犯が都内の某団体に潜伏していたのは関係者なら皆知っていた。もちろん警察もだぞ。でも警察は逮捕しない。なぜか? 犯人が外国籍で某団体に所属していたからだよ」(同)

“某団体”とは暴力団、総連、民団、宗教団体などだろうか?

「某“特別な集団”だ。それ以上は言えない。とにかく政府が最も手を出しづらい相手と言えばわかるだろう」

 2003年6月には、世田谷事件と極めて類似した事件が起きている。「福岡一家4人殺害事件」である。

 衣料品販売業・松本真二郎さん(当時41歳)、妻・千加さん(同40歳)、長男・海くん(同11歳)、長女・ひなちゃん(同8歳)の4人の遺体が博多湾で発見された。「金になると持ちかけられ犯行に及んだ」と犯人の一人が供述したように、世田谷事件と同様金銭略取のために家族4人の尊い命が奪われた。

 この事件では中国人留学生3名が逮捕され、中国の司法当局により1人が「死刑」、もう1人が「無期懲役」の判決を受けた。捜査本部は「犯行を指示した人物がいるとみて背後関係を調べている」と報じられたが、その後この件に関する報道はない。

「暴力団と中国マフィアの関係だよな。中国人の留学生を受け入れる仕事を日本の暴力団が引き受ける。経営に困っている学校経営者に話を付けたり、法務省関係者にわたりを付けたりしてビザを発給させる。1人50万~100万円くらいだろう。中国マフィアは日本に行きたい奴らを集めて300万からのカネを取る。もちろん最初からまともに働いて返済なんか出来るわけもない。結局、日本の暴力団からこうした犯罪を引き受けるようになる。こっちにとっては最初からそれが目的でもあるがな。要は新しい犯罪実行の暴力団予備軍といったところだ」(同)

 福岡一家4人殺害事件の犯人が逮捕されたのは逃げ道となる圧力団体が存在しなかったことが理由だという。

「世田谷の事件と構造は一緒だ。日本人が行なってきた犯罪が、暴対法のおかげで外注されるようになったんだよ」

宮澤さん一家は「外交カード」として使われた?

 ここで冒頭の謎かけの回答を書き記しておきたい。

 未解決事件には2つのケースがある。1つは捜査が及ばずどうしても犯人の特定や逮捕が出来ないケース。もう1つは“何らかの事情”で未解決事件となってしまうケース──そして元公安幹部が未解決事件の“3大要素”として示唆した「外交」「政治家」「宗教」。

 世田谷事件もこの3大要素が存在するがゆえに未解決事件となったのか──? 元公安幹部は深い証言をした。

「初動捜査も通常通り行って、犯人もある程度の特定はできた」

 犯人もある程度の特定はできた──ならばなぜ犯人を逮捕しないのか? それは世田谷事件が前述の三大要素が絡むがゆえの未解決事件であることに他ならないからである。

 つまり世田谷事件は厳密に言えば未解決事件ではない。犯人を特定していながら逮捕できない「解決不能事件」なのだ。

「現在の凶悪犯罪の特徴は外国人による犯行が極端に増加していることです。この場合ICPO(国際警察機構)に協力を要請するのは当然のこと、他官庁や政府の意向、諸外国との折衝など多くの手続きを要します。現実問題として外交問題が発生する可能性がある場合、政治的配慮がとられても不思議ではありません」(法務省関係者)

 政治的配慮──つまりこの法務省関係者の証言は「政府の意向で殺人犯が野放しになっている」という厳然たる現実を証明している。そしてアジアに太いパイプを持つ与党議員は平然とこう言った。

「日本は外交カードがきわめて少ない国なんだ。軍事でも貿易・経済でも日本が切れるカードはほとんどない。その時に、こうした犯罪が外交カードに利用されることは容易に想像できるよね」

 ある日突然幸せな一家の命が金で雇われた殺し屋に奪われる。ほどなくして実行犯の特定がなされる。だが警察や政府は外交問題で腰が引けた状態で動かない。そして事件は迷宮入りする。

 国益という名の大義名分の下、何の罪もない幸せな一家4人の命を奪った殺人者は野に放たれる──これが日本という国家の現実だとしたら……あまりにも恐ろしい現実ではないか。

(取材・文/中村透)

「「宮澤さんは外交カードとして使われた」世田谷一家殺害事件14年目の真相(後編)」のページです。デイリーニュースオンラインは、犯罪警察殺人事件裏社会社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧