国土の「均衡ある発展」というビジョンの象徴ともいえる田中角栄の『日本列島改造論』では、不思議なことに「自然災害大国、日本」の視点がほぼない。
同著において唯一、自然災害について触れられているのは、
「いま東京が関東大震災と同じ規模の大地震に襲われたらどうなるだろうか。東京都防災会議、東京消防庁によると、倒壊家屋二万戸、圧死者二千人、地震が発生してから五時間後に品川区、中野区の面積に匹敵する16万平方キロメートルを焼き尽くし、焼死者実に56万人という恐るべき被害が予想されている」(P47)
の部分のみである。
『日本列島改造論』は、主に過密、公害、満員電車、大気汚染、劣悪な住居スペース、都市部の物価高騰などを理由に、東京圏から地方に工場(および人)を移転させるべきという発想になっている。土台として日本の国土的条件である「自然災害大国」があるわけではないのだ。主要国の「地震力を考慮する地域」を比較すると、ショックを受ける。「地震力を考慮する」とは、構造物を建設する際に、地震発生を前提にしなければならないという意味になる。
フランスはピレネーとアルプスの周辺、ドイツはやはりアルプスの周辺、アメリカは主に西海岸が「地震力を考慮する地域」となっている。それに対し、わが国は何と「全土」。日本列島に暮らす限り、「地震」という自然災害からは誰も逃れることができない。地震だけではない。日本は台風や豪雨により、水害、土砂災害が多発する国でもある。さらには、火山も噴火する。
2018年1月23日、草津白根山の本白根山が噴火。陸上自衛隊第12旅団第12ヘリコプター隊所属の伊沢隆行陸曹長が、部下を庇い、命を落とした。日本の国土面積は世界の約0.25%にすぎない。それにも関わらず、世界の活火山の1割近くが存在する、世界有数の火山大国でもあるのだ。
加えて豪雪災害。2月6日、日本列島は上空に強い寒気が襲来し、日本海側で大雪となった。福井市では6日午後2時時点で、平年の6倍を超える136センチメートルの積雪を記録した。同日、福井市内では雪に埋まった乗用車の中で男性が死亡した。さらに福井県北部の国道8号線では、約10キロメートルの区間で自動車約1500台が立ち往生し、自衛隊が出動。
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第259回 国土経済学
2018.02.26 14:00
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