昭和59(1984)年12月25日夜、東京・築地の料亭「桂」で、次期自民党総裁選へ竹下登を擁立することを含みとした田中派内のグループ「創政会」結成へ向けて、初の協議が行われた。そこには、小沢一郎の姿もあった。それまで田中角栄のもとで一枚岩を誇った田中派内に“派中派”をつくることは、田中にとってはまさに「ワシをはずす気か」といった穏やかならぬ胸中であった。その頃の田中派担当記者の、こんな証言が残っている。
「ロッキード裁判を抱えていた田中は、折りに触れて、『竹下が総理になるのは、ワシがもう1回(総理を)やったあとだ』と吹聴していた。しかし、小沢としても田中が裁判を抱えて身動きが取れない以上、派内の世代交代を進めることはやむを得ないという考えだった。いつまでも総裁・総理候補を出せないとなれば、田中派も確実に衰退の道をたどり、やがては“一家心中(注・派閥崩壊)”になりかねないということである。小沢は、こう言っていた。
『仮に、オヤジ(田中)が二審もクロということになったら、その時点で今度こそ皆がオヤジから離れてしまう。田中派にはちゃんとした長男(注・竹下)がいるんだから、いまこそオヤジは家督を渡すべきときだろう。オヤジの手で竹下政権をつくったほうが、むしろこれからのオヤジのためになる』と。
こういう思いに至った小沢だったが、創政会結成を決断した日は、田中のためと信じて走らなくてはならない政治の非情さを思って、一晩、泣き明かしたとのエピソードがある」
田中は結局、小沢らの言う「創政会というのはあくまで“勉強会”です」との言葉を信じ、「分かった。勉強会としてなら認める」として、渋々ながら創政会結成を了承したのだった。
しかし、年が明けての昭和60年2月27日、その田中が脳梗塞を発症して倒れた。結果的には、これを機に田中は言葉を失い、事実上、政界の舞台裏からも姿を消すことになる。
この「闇将軍、倒れる」により、重しを欠いた政界は一気に混迷化。とりわけ「親分」を失った田中派は求心力を欠き、足並みが乱れ始めることになった。
まず、「ポスト鈴木(善幸)」で総裁選出馬意向を示して派内に一騒動を起こした二階堂進が、「ポスト中曽根(康弘)」で再び総裁選出馬への意欲を表明。
田中角栄「名勝負物語」 第五番 小沢一郎(8)
2019.03.18 06:00
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