世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第205回 『対外直接投資と逆輸入』という問題 (1/3ページ)

週刊実話

 日本企業が日本国外に投資し、工場や店舗などを建設する経済行為を「対外直接投資」と呼ぶ。むろん、日本国内の工場はそのまま稼働させ、外国に生産拠点を「新設」するケースもある。その場合は、わが国の雇用は影響を受けない。
 だが、現実の対外直接投資の多くは、国内の工場を閉鎖し、外国に拠点を「移す」形になりがちだ。理由は、グローバリズムが浸透した世界において、企業の対外直接投資は「(主に株主の)利益最大化」が目的であるためだ。
 所得水準が高い先進国の工場を閉鎖し、より「賃金が安い」国に工場を移転する。すると、同じ製品を生産するために必要な人件費が削減される。売り上げが変わらないと仮定すると、利益は増える。増加した利益は、株主、経営者、債権者(銀行など)に分配されることになる。また、工場が移転してきた国(新興国など)では、新たな雇用が創出され、現地の人々が工場で働き、所得を稼ぐことが可能になるため、利益を得る。

 もっとも、お分かりだろうがこのスキームが進むと、損をする人々が必ず出てくる。もちろん、もともと工場があった先進国で雇用されていた労働者である。何しろこれまで勤めていた工場が閉鎖されてしまうのだ。当然ながら、失業問題が発生する。
 雇用が失われ、国民が貧困化すると、先進国の政府は景気対策や失業対策を求められる。対策の原資は税金となるため、最終的には「株主や経営者、後進国側の労働者が得た利益」を、先進国側の国民が負担することになってしまう。

 さらに厄介な問題がある。本来、国内需要向けに国内生産されるべき製品が、対外直接投資の拡大により外国で生産され、先進国側に「逆輸入」されるケースだ。
 例えば、対外直接投資の目的が「日本以外の国々への輸出拡大」だったとしよう。その場合、確かに雇用は失われるが、輸入増による所得縮小は起きない。あるいは逆に、輸入が増えたとしても、旺盛な国内需要が満たされるだけで、雇用は失われないというケースもあり得る。
 ところが、対外直接投資で日本国外に工場を移し、さらに外国の日系工場で作られた製品を日本に逆輸入するとなると、国民経済は「雇用喪失」「需要喪失」と、二重の被害を受けることになる。しかも、国内需要が旺盛ではないデフレ期に、この組み合わせを推進されると最悪だ。

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