世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第211回 潜在成長率の倍増 (2/3ページ)
例えば、日本の経済が5%成長したとしよう。その期間、労働投入量の増加によるGDP成長への寄与度が1%、資本投入量増加分の寄与度が2%とする。労働投入量や資本投入量“だけ”がGDPを決定するならば、日本の経済成長率は3%のはずだ。ところが、現実の成長率が5%だった場合、2%分、大きくなってしまう。
この“乖離分”について「TFPの向上によるもの」と考えるわけだ。
実は、TFPは事前には決定できない。あくまで、経済成長率が確定し、そこから労働投入量と資本投入量の寄与度分を差し引いたものがTFPであると計算されるわけである。
例えば、労働投入量と資本投入量に変化がなく、それでも実質GDPが拡大した場合、
「TFPが高まったため、潜在成長率が増えた」
と解釈されるのだ。
さて、内閣府のGDPの算出方法の見直しに伴い、日本経済の中長期の実力を示す潜在成長率が、これまでの0.4%から0.8%へと跳ね上がった。
GDPが統計手法の変更により成長したものの、労働投入量と資本投入量が劇的に変わるわけではない。労働投入量や資本投入量が変化していないにもかかわらず、いきなりGDPが31兆円も増えてしまった。というわけで、内閣府は、
「全要素生産性(TFP)の伸びとして潜在成長率の推計に反映された結果」
と、潜在成長率が倍増した理由を説明している。
ポイントがお分かりだろうか? 式で書くと、
【TFP=経済成長-労働投入量の寄与度-資本投入量の寄与度】
なのである。そして、
【潜在成長率=労働投入量の寄与度+資本投入量の寄与度+TFP】
である。
経済成長すれば、TFPは自動的に高まる。TFPが高まれば、潜在成長率は伸びる。労働投入量と資本投入量が伸びなかったとしても、経済成長しさえすれば、潜在成長率は上昇するのである。
逆に、経済成長しない場合、潜在成長率は低下する。わが国はデフレーションにより、1998年以降、経済が成長しない状況が続いている。結果的に、潜在成長力は下がって当たり前なのだ。
日本は経済成長していないために、潜在成長率が低い。