世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第244回 内部留保課税という狂気 (1/3ページ)
企業の内部留保(というよりは「現預金」)の巨額さが問題になっている。というわけで、2017年総選挙では「内部留保課税」などと、私有財産権の侵害を言い出す政党まで出現したわけだが、実に奇妙な話だ。
なぜならば、企業の現預金を過剰に余らせたくないならば、法人税率を引き上げれば済む話だからである。ストック(資産)ではなく、資産が貯まる前のフローに課税をするのだ。
企業に貯まる現預金の「出所」がどこかは、誰にでも分かる。もちろん、純利益である。税引き前利益から法人税を差し引かれた残り、純利益が現預金として貯まるのだ。
ならば、法人税を増税すればいい。
しかも、法人税が増税されると、企業経営者はできるだけ「税引き前利益を残さない」経営に舵を切る。すなわち、人件費を増やし、交際費を増やし、そして減価償却費(投資)を増やすのだ。デフレ脱却のためには、まことに有効な施策といえる。
もっとも、法人税率を引き上げると純利益が減る。ただでさえ費用が増え、税引き前利益が小さくなっているところに、法人税率が引き上げられれば、ますます純利益が減少してしまう。
それを許せない勢力があるわけだ。もちろん純利益から「配当金」や「自社株買い」により利益を得ることができるグローバル株主たちである。
安倍政権の法人税引き下げにせよ、内部留保課税構想にせよ、「純利益を減らさない」という点は共通している。いずれにしても、グローバリズム的政策なのだ。
一般企業(非金融法人企業)の現金預金の額と、事業所規模5人以上の会社の現金給与総額、及び「きまって支給する給与」の推移を見てみよう。
特に、第二次安倍政権発足以降がひどいのだが、2012年末から'16年末まで、現預金は約50兆円、割合にして25%(!)も増えた。ところが、現金給与総額は0.47%しか増えていない。きまって支給する給与に至っては、▲0.71%である。
これが、安倍政権の「成績表」なのだ。
しかも、自ら法人税減税という内部留保が増える政策を打ち、同時に緊縮財政で需要拡大に背を向けてきた以上、明らかに政府の責任である。