先立った母親が幽霊となって現れ、子育てをする「子育て幽霊」のあれこれ (5/7ページ)

心に残る家族葬



また、「幽霊」の出現に説得力を持たせる「墓」の存在は、赤ん坊を残したまま、路傍で行き倒れた若い母親のものか、瀕死の状態だったものの、周囲からは死んだものとして墓に埋葬されてしまっていた母親が実は生きていて、虫の息の中、赤ん坊を産み落とし、その後すぐに亡くなってしまっていたことを、誰かに発見されたものだった可能性がある。

■母親を早くに亡くした子供の気持は?

「子育て幽霊」話には、肝心の、幽霊に育てられていた「子ども」がほとんど登場しない。福岡の場合は、子どもは見つけられた後、すぐに亡くなったという。鹿児島県大島郡喜界ヶ島に伝わるものは、発見された男の子は、後に月持惣之進という偉い侍になった。また、長崎市でも、男の子は優秀な僧侶となり、伊良林(いらばやし)の浄土真宗・光源寺(こうげんじ)の6代目の住職となったというもので、いずれも、祖型とされる兵庫県小野市の通幻同様の「出世譚」で終わっている。そこで思い出して欲しいのは、幽霊ばかりではなく、母親の幽霊にほんのわずかの期間でも、育てられた「子ども」の存在だ。母親を失った「子ども」は何を思い、育っていったのだろうか。『むく鳥のゆめ』に登場するむく鳥のように、自分のそばにいない母を恋しがりながら日々を過ごし、実際に母親の幽霊なのか、あるいは欲しくて欲しくてたまらない母親を、夢や日々移り変わる気象現象の変化の中などに見出し、寂しい心を慰めていたのかもしれない。

■最後に…

日本人の少子高齢化問題が大きな懸念とされている現在、「子育て」にまつわる様々な悩みは、「子育て幽霊」がリアルなものとして人々の心に浸透していた時代とは大きく異なるだろう。しかし、例えば出産後の母親が抱えるとされる、「産後うつ」などが近年、明るみになってきた。子どもを産んだばかりの母親は全て幸せに満ちあふれ、子どもの将来をあれこれ夢見るなど、今まで考えたこともなかった母親としての自覚が芽生え、それにふさわしい振る舞いや物の考え方になってくる…などと、多くの人々は思い込んでいる。しかし「みんな」がそうではない。抑うつ症状に陥り、やる気が出ない、イライラする。人によっては衝動的に自殺したくなるほど、精神的に追い詰められてしまうという。
「先立った母親が幽霊となって現れ、子育てをする「子育て幽霊」のあれこれ」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る