先立った母親が幽霊となって現れ、子育てをする「子育て幽霊」のあれこれ (1/7ページ)
『泣いた赤鬼』、『りゅうの目のなみだ』などで知られる童話作家・浜田広介(ひろすけ、1893〜1973)の作品に、『むく鳥のゆめ』(1921年)というものがある。
■『むく鳥のゆめ』とはどんな話?
とうさん鳥と暮らす、むく鳥の子どもがあるとき、かあさん鳥の不在に気づく。とうさん鳥は、かあさん鳥はとおいところに出かけて行ったと言っていたが、むく鳥はいつ帰ってくるのか気になってしまう。とうさんに何度も尋ねたが、ものぐさそうに「ああ、もうちっと、まっておいで」と答えるばかりである。とうさんに尋ねるのを止めて、むく鳥はかあさんをただひたすら待っていた。ある夜中、かさこそ、かさこそ、と音がする。単に強い風に枯葉が吹かれている音に過ぎなかったのかもしれないが、むく鳥にはかあさんが帰ってきたように思われた。また、かさこそ、かさこそ、と音がする。音を辿っていくと、1枚の枯葉が今にも風に吹き飛ばされそうになっている。むく鳥は巣の中の毛を1本抜いて、枝にしっかりとくくりつけてやった。その夜にむく鳥が見た夢がある。どこからか、体の白い1羽の鳥が飛んできて、むく鳥父子が眠るほら穴の中まで入ってきた。むく鳥はおどろいて、「ああ、おかあさん」と呼びかける。しかしその白い鳥は何も言わずに、優しい2つの目を向けて、むく鳥を眺めた。むく鳥は白い鳥に取りすがろうとしたが、いつしかその姿はどこかに消えてしまった。翌朝、外に出てみると、周囲に雪が薄く降っていた。むく鳥は、あの白い鳥はひょっとしたらこの雪だったのかもしれないと思い、葉に積もっていた雪を羽で払い落とした…という短い話である。
この話は子どものための童話だが、日本には、子を思う母親が死後もなお、幽霊となって現れるばかりではなく、子育てをするという話が数多く伝わっている。