永遠のロングセラーはどう生まれたか。みすず書房と『夜と霧』の60年 (1/7ページ)
「言語を絶する感動」と謳われる本がある。
その本は、第二次世界大戦が終わって間もない1946年にオーストリアのウィーンで出版され、日本では1956年に日本語翻訳版が出版された。
原題は“Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager”。
――直訳すると「一人の心理学者が強制収容所を体験する」。
その本は、2012年の時点で、世界で1000万部を超えるベストセラーとなっている。
日本語翻訳版のタイトルは『夜と霧』。
出版元は人文・哲学書を中心に扱う、みすず書房だ。
1956年の刊行以来、60年以上にわたり読み継がれてきた『夜と霧』は、2002年に新訳版が出版され、リニューアルが加えられた。また、2017年にはオーディオブック版が「FeBe!」にて配信開始している。
みすず書房と『夜と霧』をめぐる60年という時間は、どのようなものだったのか。
新版の発行に深く関わった、みすず書房代表取締役社長の守田省吾氏は、この作品について次のように語る。
「『夜と霧』は非常に不思議な本なんです。というのも普通、どんなにロングセラーと言われても、出版されてからしばらくすれば売れなくなっていきます。本にはやはり賞味期限というものがあります。
でも、『夜と霧』はコンスタントに読まれ続けている。テレビやマスコミで取り上げられたりもするので、その影響もあるのでしょうけど、むしろ最近は読者が増えています。必ず時代の節目で話題になって、読者が広まるんです。
このような本は珍しい。みすず書房でも例外です。